政府ガイドラインによると、フリーランスとは「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」と定義されています。昨年11月に施行されたフリーランス新法は、このような事業者に関し、①発注事業者との間の取引適正化、②フリーランスの就業環境の整備を行うものです。
労務を提供する契約には、請負、委任、雇用の3類型があり、このうち雇用契約に関しては労働法制といわれる各種保護法制が労働者保護の基準や手続を定めています。ところが、実態は一方的な労務の提供でありながら請負(業務委託)という形で働くフリーランスは、事業者とされることから労働者としての最低限の法的保護も受けられない状態にあります。フリーランスで働く方の数は400万人を超えるといわれ、ウーバー、アマゾン配送などギグワークといった現代社会に不可欠なプラットフォーム労働者もその中に含まれることから、「働く者」としての無権利状態を改善するための法整備が求められていました。
新法は上記①として、フリーランスを依頼する事業者に取引条件の明示、報酬支払期日の設定、事業者による一定(報酬減額や買いたたき等)の禁止行為の設定、募集情報の的確表示を義務づけ、②として、育児介護等に対する配慮、ハラスメント対策、中途解除等に対する制限に関する規定を設けました。もっともこれらの規定に違反した場合の効果が行政による勧告や違反業者名の公表に限られるため、新法が及ぼす効果は未知数で、「フリーランス労働者」の法的保護はまだ十分とはいえません。
* 新法の内容も含め、橋本陽子著『労働法はフリーランスを守れるか』(ちくま新書)は参考図書としてお勧めできます。