弁護士 加納 力

 先日の民法改正で、離婚後の夫婦が共同で親権を持つ共同親権制度が導入されることになりました。2年後の2026(令和8)年までに施行される予定です。

 親権とは、未成年の子の利益のために、監護・教育を行い、居所を指定し、就職を許可し、子の財産を管理したりする権限・義務であるとされています。英語で「権利」を表す「Right」ではなく、「Parental Authority」(親としての権限)です。
 婚姻中は父母が共同で親権を行使することになっていますが、現行民法では、離婚後はどちらか一方が親権者になります(単独親権)。しかし、離婚という両親の都合で子と片親との関係が切り離されてしまうのはいかがなものか、という問題意識が叫ばれるようになり、今般の法改正に至りました。

 もちろん、夫婦としては一緒にやっていけないけれど、子供のことは割り切って、互いに協議して「親としての務め」を果たしていこうと約束できる、理想的な離婚もあるでしょう。しかし実際には、不貞、DV、浪費といった家庭をかえりみない態度の結果離婚に至る「わかりやすい」事案もあれば、精神的・経済的に追い詰められてやむなく別居に至るような、証拠の残りにくい事案もあります。当事者間の合意(それすら真意に基づくものか検討の余地があります)がない場合でも、家庭裁判所の判断で共同親権とする可能性がありますが、適切に共同親権の適否を判断できるのか、裁判所の人的資源の面からも不安が指摘されています。

 判断基準は「子の利益」。親の都合が優先していないか、慎重に検討する必要が、私たち弁護士にも求められます。