弁護士 仲村渠 桃

 障害者差別解消法は、障がいのある人への「不当な差別的取扱い」を禁止し、「合理的配慮」及び「環境の整備」を行うことで、障がいのある人もない人も共に生きる社会(共生社会)を推進することを目的として平成25(2013)年に制定されました。今年の4月1日に改正された同法では、従前は努力義務とされていた事業者による「合理的配慮」の提供が法的に義務付けられることとなりました。
 もっとも、同法は求められた「合理的配慮」を100パーセントその通り実現することを義務付けるものではなく、事業者の「過重な負担」にならない範囲で提供することとしています。「過重な負担」になるか否かは、事業への影響の程度、実現可能性の程度、費用・負担の程度、事業規模、財政状況、配慮の提供がなされないことにより障がいのある人が被る人権侵害の程度等を踏まえて総合的、客観的に判断されることとなっており、一律的・類型的に判断できるものではありません。この法律は、そのような両者の様々な個別具体的事情を前提として、「合理的配慮」を求める側と求められる側が、対話を通して、求められた「合理的配慮」の提供が可能であればこれを提供し、様々な事情から全てを提供できない場合も代替措置を模索していく中で具体的な「合理的配慮」の内容を決定することを求めているのです。
 「前例がない」、「もし何かあったら」、「特別扱いはできない」といった理由で一方的に「合理的配慮」の提供を拒否するのではなく、障がいのある人の意思を尊重し、対話を通じて、障がいのある人が障がいのない人とできるだけ同じように日常生活を送れるよう模索することで真のインクルーシブ社会が実現できると思います。