夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を、離婚する際に分けることを財産分与といいます。財産分与には、夫婦が共同生活を送る中で築いた財産を公平に分配すること(精算的財産分与)、離婚後の生活の保障(扶養的財産分与)、離婚原因を作ったことへの損害賠償(慰謝料的財産分与)の性質があり、中でも精算的財産分与が基本とされています。
財産分与の割合は、夫婦の話し合いにより決められますが、それぞれの収入にかかわらず、夫婦の財産を2分の1ずつに分けるのが原則です。個別的な事情を考慮して、割合が決められることもあります。
財産分与の対象となる財産には、名義にかかわらず、夫婦が婚姻後に築いた一切の財産、例えば、現金、預貯金、不動産、自動車、退職金、家具や家電などが含まれます。結婚前にそれぞれが有していた貯金などは特有財産として、財産分与の対象にはなりません。
では、ペットも財産分与の対象になるでしょうか。ペットは法律上一種の動産とみなされ、婚姻中に夫婦で飼い始めたペットは財産分与の対象になります。しかし、他の財産のように半分に分けることができないのはもちろん、一般的に財産的な価値があるとされることは少なく、また、ペットをどちらが引き取って育てるかで揉めることもあります。この点、福岡家庭裁判所久留米支部(令和2年9月24日判決)は、資産の財産分与に加え、夫婦が飼っていた犬3頭について、積極的な財産的価値があるとは認め難いものの、夫婦共有財産に当たり、財産分与の一環として帰属等を明確にし、妻と夫が持分に応じて飼育費用を負担するのが相当であるとしました。また、具体的な分与の割合については現実的な飼育費用の負担能力も考慮し、夫が3分の2、妻が3分の1の割合であるとし、犬を飼い続ける妻に対して、飼育に必要な費用のうち夫の持分に相当する金額について定期金の支払いを命じました。この裁判所の判断は、ひとつの事例にすぎませんが、ペットの財産分与について、様々な解決策があることを示すものといえるでしょう。