2013年の労働契約法と研究開発強化法の改正により、有期雇用の研究者の契約期間が10年を超えた時に研究者が申出をした場合は、無期雇用に転換することとされ、有期雇用の研究者の雇用を守る制度が成立しました。ところが理化学研究所(理研)は2016年、有期雇用の研究者について、2013年を起点として10年の雇用の上限を定めたことから、2023年3月末に約200名の有期雇用研究者が雇い止めになるという批判を受けることなりました。
昨年9月30日に「理研、研究者の通算雇用期間の上限撤廃」ということが報道され、あたかも理研が社会的批判を受けとめたかのような認識が広まっているようです。しかし、理研のこの提案は次の3点で問題を残す内容となっています。
まずこの「雇用期間の上限撤廃」は2023年4月1日実施であり、現在問題になっている2023年3月で雇用期限となる研究者には「10年の上限」の規定が適用され、雇い止めは実施されることです。次に理研は、雇い止めをうけた研究者も新たな研究プロジェクトに採用される可能性があるなどと述べていますが、採用の保障は一切ないということです。また2023年4月1日以降雇用期間の「上限撤廃」をしたからといって、理研は有期研究者の無期雇用への転換を積極的に行う姿勢をしていないことです。
理研は経営上の必要性からの有期研究者の雇用の必要性を強調していますが、その結果ノーベル賞に輝いた湯川秀樹氏や朝永振一郎氏が所属した理研の研究水準に大きな問題が生ずることがないかどうか、再検討をすることが求められていると思われます。
理化学研究所の有期雇用研究者の雇用問題について
カテゴリー:社会の動き