弁護士 村山 裕

 通常国会末日、来年4月の「こども家庭庁」設置と同日施行の「こども基本法」が決まりました。各省庁に縦割りの子ども施策を、「こども家庭庁」を新たな司令塔として首相直属の内閣府外局に置き「こどもまんなか社会を目指す」とともに、「こども基本法」で「憲法と児童の権利に関する条約の精神」に則って行うといいます。前者は、コロナ渦中の総選挙を控えた昨年4月、前首相が党の施策としたのを引き継いだ政府提案で、後者は、基本法なしに何をするのか、子育て支援・少子化対策の焼き直しでは?などの批判に対応した与党提案でした。

 この評価は分かれそうです。子どもの権利条約の生命・生存・発達の権利、最善の利益、意見表明権、差別禁止の4原則を読み取ることも可能で、条約審査で国連子どもの権利委員会が設置を勧告していた、子ども施策の「総合調整機関」と「独立した子どもの権利擁護機関(子どもコミッショナー)」の2つのうち、前者の機能は担えそうです。他方、なぜ「こども」なのか、なぜ「家庭」を付加するのか、子どもコミッショナーはどうするのか、財源はどうなるのかなどの疑問が残ります。与党の中には「子ども達を、権利ばかり主張して責任や義務を果たさないおとなにしてはいけない」とか、家庭や親の責任重視の議論もあり、抵抗が強く子どもコミッショナーは実現しませんでした。また、教育関係の権限分配は不十分といわざるを得ません。

 しかし、これほど子どもの権利条約を意識した具体化が国会で議論され実現したのは1994年の条約批准後初めてともいえ、今後の取り組みの足がかりにすることは出来そうですが、如何でしょうか。

子供の守り神・入谷鬼子母神の朝顔市