弁護士 長谷川 弥生

 先の国会で、入管法改定法案が提出されましたが、市民の力で、廃案に追い込むことができました。外国人の人権問題に取り組む弁護士たちも、「廃案一択」を掲げ、各地でデモを含めた抗議活動を精力的に展開しました。しかし、何よりも、政権与党が無視できないほどに、同法案に反対する世論が一気に高まった背景には、一人のスリランカ女性の、名古屋入管施設内での死があったといわねばなりません。

 これまで、名古屋の他でも、牛久や大村の入管施設内で、適正な処遇を受けられず、死に至った人たちが多くいます。

 罪を犯した場合も身柄拘束には厳格な時間制限があり、懲役刑で自由を奪うには、刑事裁判を経る必要があります。これに対し、日本に滞在する外国人は、在留期間を超過したという一事であっても、入管行政の裁量で、無期限に収容され得ます。日本の入管の長期収容問題は、国連から国際人権法違反であるとの指摘も受けています。

 また、日本の難民認定率は0.4%と、諸外国に比べて著しく低く、このため難民認定されることなく、入管に収容される人たちもいます。

 上記改定法案は、これらの問題に頬かむりして、長期収容の問題を、ひとくくりに強制送還で解消しようとしたものです。入管当局の説明に騙されてはならず、むしろ、難民認定の問題を見直し、入管施設内での処遇の改善も含め、「外国人の人権」が尊重される入管行政に変えていかなければなりません。

 ある弁護士は、今回の廃案は「ドローに持ち込んだだけ」と述べていました。これからも、入管行政の改善を求め、活動は続きます。