弁護士 村山 裕

 少年法の適用年齢を18歳未満へ引き下げる法制審の答申がなされようとしています。

 世間には誤解がありますが、20歳未満の少年犯罪は、増加も凶悪化もしていません。家庭裁判所が、家裁調査官の調査に基づいて審理し、少年院での教育など保護処分で対応する現在の少年法が有効に機能していることは、法制審でも共通理解になっています。

 民法の成年や選挙権の年齢が18歳を「大人」として扱うのだから、少年法の年齢も揃えるのが「分かり易い」というのです。しかし、飲酒・喫煙・ギャンブルの禁止などは20歳未満のままです。

 法制審では、18歳・19歳の少年を成人の刑事手続で対応することになると、少年手続での家裁調査官の調査や鑑別所への収容で、教育的働きかけをしながら保護処分の要否を決めたり、少年院で行っていたきめ細かな働きかけなどがなくなり、再犯が増えることが懸念され、これをどう防ぐかが検討されてきました。
 その1つに、成人の場合64.3%が軽微な事件で起訴猶予とされ、何の働きかけもされずに終わる実態に対応するとして、「新たな処分」が構想されています。
 これは、検察官が軽微事件として起訴猶予にした18歳・19歳の若年者にだけ、家庭裁判所の手続で保護観察等ができる制度を設け、その実効性を確保するため、鑑別所への収容や少年院に類似した施設収容処分も行うというものです。

 「大人」として扱うなら、どうして18歳・19歳だけ、起訴猶予なのに特別に身体拘束を伴う保護観察等が可能なのか。成年の18歳・19歳を特別扱いするなら、起訴猶予事案だけでなく、全ての事案で現在の少年法手続を使えばいいのではないか。あまりにご都合主義なのではないでしょうか。