相続法が40年ぶりに大幅改正され、今年の1月から順次施行されます。改正の大きな特徴は、①自宅の居住について配偶者の権利を確保する規定ができたこと、②介護などの面で相続人でない配偶者の権利を認めたこと、③遺言の形式と保管方法が変わることです。前二者について説明します。
改正法は「配偶者居住権」という権利を新たに創設し、遺された配偶者が自宅に住み続ける権利を認めました。相続財産中に自宅の権利がある場合、これを居住権と所有権に分け、被相続人の配偶者は居住権(配偶者に固有の相続財産)という権利を優先して取得することができます。自宅は居住権と所有権に分けられ、居住権の評価は配偶者の余命を基準として相続人間の合意により決められます。居住権は短期と長期に分かれ、短期居住権は原則として相続開始から6カ月、長期居住権は配偶者が亡くなるまでの終身となります。
20年以上婚姻している夫婦には、自宅を生前贈与又は遺言により遺産分割の対象から外すことが認められました。この場合自宅は遺産分割の対象から除外されますから、配偶者は自宅を確保した上で一定の相続財産を承継することができます。ただし、この場合は二次相続(配偶者死亡時の相続)での相続税へのはね返りがあることに注意が必要です。
相続人ではない配偶者の権利を創設したのは、義理の父母の療養介護に寄与した相続人の配偶者に対して特別寄与料を認める制度の導入です。実際に療養介護をしたのは配偶者なのに、相続の権利が一切認められていなかった点を改めました。この制度により相続人の配偶者が遺産分割協議に関与することができるようになりましたが、その分相続の争いが長期化・複雑化するというマイナスの面も生ずるかもしれません。