弁護士 金井清吉

 東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(略称「迷惑防止条例」)改正が去る3月29日一部政党の反対を押し切って都議会で成立し、施行されました。

 今回の条例改正では、従前の「つきまとい」「粗野・乱暴な言動」「連続電話」「汚物の送付」の四類型に、「監視していることを告げること」、「名誉を害する事項を告げること」等の3類型を追加し、更に、「つきまとい」類型に新たに「住居等に押しかけ、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと」が追加されました。これに合わせ刑罰も重罰化されました。
 上記「つきまとい」行為に関する規制は、2002年6月の都議会に警視庁から提出され、規制対象の広範性から憲法が保障する人権の侵害にあたるとの世論の力によって可決されず、翌2003年に若干の規制要件の厳格化があって、可決されて条例化されましたが、問題は以下の通り残ったままでありました。今回問題を更に拡大したと言ってよいでしょう。

市民運動や労働争議も標的に?

 問題の一つは、この条項は「ねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的」で行った場合に犯罪になりますが、本来犯罪にならない行為が、かかる曖昧な主観的な「目的」で犯罪とされるということから、何ら規制が無いに等しく、結局取締まる警察の恣意性に任され、権限濫用が懸念され、容易に逮捕など人権侵害のおそれが大きいことです。
 二つに、新たに追加された類型からは、国会前の集会や、報道機関の取材活動、市民運動や労働組合の争議も規制されるおそれが大きいことが指摘されています。
 三つに、この条例は法律によって規制されていない行為を条例で決められるのかという、根本問題があります。条例は法律の範囲内で制定が許されている(憲法94条)からです。