弁護士 江森民夫

 平成29年9月15日に労働政策審議会は、 政府の諮問した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」について「概ね妥当」と答申をしました。

 この「法律案要綱」は、限度時間を超える時間外労働について「罰則規定」を設けたり、「同一労働同一賃金制規定」を設けるなど、「規制を強化」する法律改正と、いくら働いても一定の労働時間としか認めない「裁量労働制」の拡大や、専門職で年収1000万円程度の労働者について、残業代を払わずいくらでも残業をさせることができる制度である「高度プロフェショナル制度」を導入するなど、「規制を緩和」する法律改正を、まるごと「一括法案」として国会で審議をする内容なのです。

 ところで「罰則規定」の新設といっても、1箇月100時間または一箇月平均80時間の限度時間という過労死の認定基準と同じ内容であり、強く批判されており十分な審議が必要です。それに加えて問題なのは、「規制の強化と緩和」という質の異なる内容の法案を一括して審議するという法案の提起方法です。こうした法案は重大な内容の法律改正を慎重に審議するということを回避し、政府案を強引に成立させることを狙った法案であるといえます。これに対し、個別の法案提出と国会で慎重な審議をすることを求めていくことが、重要であるといえます。