全国9地裁で提訴された、生活保護基準の一部である老齢加算の廃止の違憲性を争う「生存権裁判」は、昨年11月の兵庫訴訟についての最高裁決定により、残念ながら全て原告敗訴という形で終結しました。憲法25条が生存権として保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の水準は生活保護基準という形で具体化され、最低賃金や年金、住民税の課税基準など様々な施策とも連動し、その増減は生活保護受給者ではない多くの国民の生活にも影響します。この生活保護基準の当否を問う訴訟は1957年に朝日茂さんが提起した朝日訴訟以来のものでした。
生存権裁判は判決としては敗訴という形で終わりましたが、その間の下級審判決や最高裁判決では、訴訟を起こした原告に理解を示すような付言がされるなど、必ずしも政府のやり方を手放しで追認したものではありませんでした。
ところが、安倍政権は、生活保護バッシングを煽りつつ、より乱暴な形で生活保護基準全体の引き下げを行いました。そして、現在、その違憲性を争う訴訟が全国29地裁で1000名弱の原告により起こされています。
「権利はたたかう者の手にある」これは朝日茂さんの言葉です。朝日訴訟は朝日茂さん1人の闘いとして始まりましたが、それが100名を超える原告の生存権裁判に引き継がれ、さらに1000名近い新訴訟に継承され、発展しているのです。