英国の国民投票の結果にはいろいろと考えさせられました。
現地から結果を伝えるリポーターが、「離脱で何が変わりますか」というスタジオからの問いかけを受けて、「食事がまずくなるでしょう」と答えたのにはうなずけました。彼は、外食産業でいかに多くの移民労働者が働いているかを言いたかったのです。
しかし、生鮮食料品も含め、現在、英国の家庭の食卓を彩る多くの食品が国外から来ていることを考えると、離脱により、人だけでなく商品流通の面でも食への影響が出ることは必至と思われます。
EU(欧州連合)は、その前身であるEC(欧州諸共同体)時代に域内の市場統合、移動の自由を実現させていますが、とりわけ1992 年の欧州連合条約による政治的分野における統一化が域内統合を促進しました。私は1988年と1993年に英国に住んでいましたが、2回目の滞英の際にスーパーに並ぶ食品が明らかに豊富に(外国産が多く)なり、外食のレベルも上がったことに驚きました。「本を食う」といわれた英国民もうまいものはわかるんだと妙に納得したことを覚えています。
英国内で離脱派が力を得た背景には、政治統合後におきた東・中欧ブロック諸国の加盟、中東情勢の不安化から生じた難民の域内流入などの影響による移民流入に対する英国民の反発が根底にあります。その意味では統合により経済的利益を得る層と職を奪われるなどして被害感情を持つ層の争いといった感もなくはありません。
今回の事態は、国民投票という究極の直接民主主義の結果が大きな混乱と分裂をもたらした例として、英国民のみならず、世界史的に記憶される事件であったと思われます。
EU離脱考
カテゴリー:社会の動き