- 労働者の雇用形態別に見る我が国の現状は、統計上正規従業員3287万人、他方パート、派遣・契約社員、嘱託社員等の非正規が1962万人で約4割を占めております。
これは経営者の「多様で柔軟な働き方」の求めに応じてきた政策の結果であり、賃金面の時給を比較すると正規と非正規は4割もの賃金格差となり、賞与や退職金を含む生涯賃金では正規の2分の1以下であると言われています。 - この様な中で、正規と非正規社員との差異に関して、一般的均等待遇の理念を根拠として是正を求める動きが起き、一定範囲を超える差別を違法とする判例が出される(丸子警報機事件)などがあり、更にEUでは、1997.12.15EC指令指令でパートとフルタイムの均等扱いは確立した原則となっていました。
これらを受けて日本では労働契約法20条が制定され、期間の定めのない労働者と有期契約労働者の間に不合理な差があってはならない旨規定されました。これを足がかりに、賃金格差是正を求める裁判が起こされるようになっておりました。 - 平成28年5月13日、定年後嘱託社員として再雇用された労働者が定年前と同じ仕事をしているところから同じ賃金を支払うよう勤務先の会社に求めた訴訟で、東京地裁は、労働者の訴えを認め、会社に対して定年前の賃金との差額の支払いを命じる判決を下しました。
この判決は、賃金格差について、労働契約法20条違反を認めた初めての裁判例であり、その意味で労働者にとっても、使用者にとっても大きな影響を及ぼす画期的判決と言うことが出来ます。この判決も定年後の再雇用者の賃金を定年前賃金水準から引き下げること自体を違法としたのではなく、正社員と同じ業務に従事させながら賃金水準だけを引き下げることは不合理で違法としたものです。 - 同一労働同一賃金の流れは、非正規で働く人の格差是正・労働条件アップに重要な意味をもつものですが、非正規雇用の拡大・温存につかわれることのないように、この面からの注意が必要です。