安倍首相がかねてより狙っていた「安保法制」(米軍のために自衛隊の武力を行使できるようにする防衛諸法の改正、いわゆる「戦争法制」)は、9月19日多くの国民の反対の声を押し切って、国会で強行成立させられました。皆さんもあるいは強い怒りの中で、あるいは困惑や不安の思いの中で、この事態を迎えられたことと存じます。
安倍首相はこの法案の必要性を説明して、最近におけるわが国周辺の軍事情勢の緊迫化(中国の南シナ海への軍事進出や北朝鮮の軍事挑発行為等)を挙げています。が、この点の政府の説明にはいくつかの点で重大な疑問があります。
たとえば、①「わが国周辺の軍事情勢の緊迫化」といいますが、その具体的な内容や程度が一向に明らかでありません。果してわが国防衛体制の飛躍的な転換を必要とするほどの軍事情勢の変化が生じているといえるか、また、②仮に相当の軍事情勢の変化が生じているとしても、だから、それに対抗してわが国の防衛体制を強化し、日米の軍事共同体制を強化するという方策は、力をもって相手国の力を抑え込もうとするパワー・ポリティックスそのものであって(「抑止力論」もその一例)、それが国際平和をもたらす上で全く役に立たないことは、歴史が証明している、など。
そのほかにも、今般の安保法制の強行成立については、①その内容が「違憲立法」であると憲法学者のほとんどが指摘していることや、②その内容が憲法9条等の枠をはみ出しているのに、正規の憲法改正手続を践んでいないこと(立憲主義違反)等の点で、重大な憲法上の問題があり、法律家としては廃止を求める以外にないと考えております。
安保法制(戦争法制)の成立を受けて
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