さる6月2日厚労省発表の本年4月の毎月勤労統計調査票によると、物価変動の影響を除いた実質賃金の指数が前年同月比0.1%上昇し、2013年4月以来、実に2年ぶりにプラスに転じたとマスコミ各紙の夕刊はいずれも1面記事で報じていた。私はこの夕刊記事を見て、違和感を覚えた。
数日後、たまたま目についたある夕刊の「実質賃金が上がったという大ペテン」という見出しを見て興味を感じ早速記事を読んでみた。同紙は、経済評論家H氏の、今日の実質賃金プラス転換は、アベノミクスの失敗を証明しているとの表題で、次のようにいう。今日の0.1プラス転換の最大の要因は、消費者物価指数の上げ渋り、昨年からの原油安の影響でのガソリン価格の大幅低下など物価上昇の伸び率の鈍化によるもので、消費者物価指数は、生鮮食料品などを除くと前年同月比0.3%減で黒田日銀総裁が目指す物価上昇目標2%に遠く及ばないとの結論である。
又経済ジャーナリストK氏も、物価上昇が鈍化したから実質賃金が結果的に上昇した今回の実質賃金0.1%上昇は、物価が上昇すれば、企業の売上げも増え、従業員の給与も上昇するという、日銀が2年前に打ち出した異次元緩和策の明白な失敗の証拠にすぎないと、同一論調でマスコミがこれらの矛盾を指摘しないことを論証している。
同時進行する極端な円安と株価高騰は、労働者の賃金のみならず一般庶民の生活を益々一層窮地に陥れている。一方で異常な政治的意図のもと、国会で展開する憲法9条違反の海外派兵論議とともに、即座に中止、撤回すべき有害かつ危険な政策推進である。
ある経済報道と政治について
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