88fd45230af475a481d732df88aada55_s 2014年5月21日に福井地方裁判所は、大飯原発の運転差止を命じる判決をしましたので、その内容を紹介します。
 これまで多くの裁判所が合理的根拠もなく原発の稼働を認めてきました。こうした中での今回の原発の運転差止の判決を受けて、原告側弁護士は「司法は生きていた」と書いた垂れ幕を持って法廷から出てきましたが、市民の共感と感動を巻き起こした判決といえます。
 判決は、福島第一原発事故の実態、地震の可能性と影響、原発の安全対策の不十分さ等を詳細に検討し、「本件原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ち得る脆弱なものであると認めざるを得ない。」と判断し、原発の運転差止を命じました。
 判決はさらに、被告電力会社や原発推進論者の主張する、「電力コスト論」「コストに関連した貿易赤字による国富流出・喪失論」「二酸化炭素削減論」などの主張について、明確な批判をしています。
 そのうち「国富流出・喪失論」について、判決は次のように批判しています。

たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。

 原告側の弁護士が判決後の集会で、判決のこれらの文章について「悔しいことに、私の訴状の文章よりもよくできた文章です。」と述べて、会場の笑いを誘っていました。たしかに判決の文章は、すばらしい感性と知性が充ち満ちています。是非とも、判決の原文を読まれることをお薦めします。