[我が家の正月料理]

 
 毎年1月3日、今は母が一人で暮らしている実家に、久しぶりに兄妹たちが集まる。そろって食い意地がはっている私たち兄妹(及びその家族)は、それぞれ美味しいものを持ち寄り、まだ明るいうちから、飲んで食べておしゃべりをする。たわいもない話をして大笑いしながら、今年もこうして無事にみんなで新しい年を迎えられたことに、心の中で感謝したりする。
 しばらくして大分お腹もふくれた頃、誰かが思い付いたように「お母さんのチーズボール食べたいよね。」と言い出す。「チーズボール」というのは、粉チーズとツナのオイル漬けと小麦粉をさくっと混ぜ、丸めて油できつね色に揚げたもの。私たちが子どものころ、お正月に母がいつも作ってくれた料理だ。昆布巻や煮しめなどのおせち料理は、今でこそ美味しくいただくが、子どもの頃は2日も続くとうんざりだった。そんな時に揚げたてのチーズボールが出てくると子どもたちは大喜びで、あっという間にお皿が空になった。それは今でも同じである。妹たちは自分でも作ろうと何度か挑戦しているようだが、やはり母にはかなわない。
 なぜお正月にチーズボールなのか(多分、当時は粉チーズもツナのオイル漬けも高かったからだろう)、母がどこでこんな料理を知ったのか、そういえば聞いてみたことがない。
 今年のお正月はみんなでチーズボールを食べながら、そんな話でもしてみようかと思う。