弁護士 新井 章
私は1963年(昭和38年)の事務所創立メンバーなので、以来ほぼ半世紀の間、この事務所に参集した若い弁護士達10数名とともに、弁護士活動を続けてきました。その際の結集の理念は、「社会に生きる労働者や貧しい人達の味方として働く」ことであり、別言すれば、平和と民主主義・人権の確立を標榜する「憲法の理念を実現すること」を目指して活動することでした。
今ふり返ると、確かにこの50年、私達は「東京中央法律事務所」の名の下に、わき目もふらずこの理念や目標の実現のために粉骨砕身してきたという自負はありますが、同時に、昨今の日本の政治状況をみると、平和主義の実現も民主主義の確立も、また基本的人権の保障もどれもが未達成で、憲法が目指した状態からは程遠く、私達の努力の不十分、非力を痛感せざるを得ないというのが実情です。
私に残された日月はそう多くありませんが、この現実にめげずに、若い仲間たちと力を合わせ前進を続けて参りたいと念じている次第です。
弁護士 田原俊雄
「若竹の天にのびたる梅雨あいま」
今朝通勤途中で浮かんだ一句である。下手の横好きで始めた俳句と和歌も最近はあまりひらめかなくなっている。しかし梅雨の合間に各所で咲いているあじさいの青や紫を見ると心が動く昨今である。先日、毎年続いている大学時代のクラス会があった。考えたら卒業以来60年になり、当初は4、50名いた友人も今回はたった5人の参加と寂しいものである。
5月末に33年続いた松蔭の勝利和解を祝う会が300名に及ぶ参加者の喜びの声につつまれて終わった。四国から参加した大手前のKさんも今年定年退職したが、退職金は満額支給された。ここも長い闘いだった。私が多少生きる力を失わなかったのは、若い時から手がけたこれらの仕事を今も細々継続しているからかもしれない。
弁護士 江森民夫
私が東京中央法律事務所に入った主な動機は、官公労働者の労働基本権裁判などの労働事件のために全国を飛び回っている所員の活躍にあこがれたからでした。現在事務所で担当する労働事件は学校の教職員の事件がほとんどですが、わが国の多くの労働者の生活と権利を守るために、弁護士の果たす役割はますます強まっていると思います。
今回事務所の労働事件の取り組みをまとめてみましたが、事務所の所員が裁判所や労働委員会での争いや、日常的な学習活動等で活躍してきたことを改めて認識しました。
これからも事務所の同僚とともに、労働弁護士の略称である「労弁」として、年齢相応の活動を続けて行きたいと思います。
弁護士 金井清吉
事務所に入って、早いもので40年が経過した。この年代の弁護士はなかなか微妙な立ち位置にいて、引退には早すぎ、ばりばり若い時の様に仕事をしたいと思う反面、余裕をもってマイぺ-スの仕事をしたいとの想いが交差する。日々お前はどうするのか?と問われている様に感じている。しかし私は出来るなら、今暫くの間健康が許す限りは、そして自分を必要と思ってくれる人がいる限り前者でありたいと思う。それは今まで人権・憲法状況等をはじめとして種々自分の理想とする方向に努力を重ねてきたが、改めて回顧すると世はこの方向と益々乖離してきていると感じるからである。人として生を受けた限り、自分を信じて正しい方向に一生かけて力を入れて努力したいと改めて思っている。今年は誠に暑いがこの夏を健康で乗り切りたい。
弁護士 加藤文也
弁護士として仕事をしてきて、34年目になります。この間、多くの人との出会いがあり、その中で多くのことを学ばせていただいたと思っております。何よりも、事実の重みと出会った方々の生きる姿勢から学び、また、仕事をする活力をいただいてきました。2011年3月の東日本大震災では、私の生まれ故郷も被災しました。復興に取り組む全ての方々にエールを送るとともに、私もこのことも視野にいれて仕事を続けていこうと思っております。
当事務所が50年にわたって取り組んできた、人権擁護と平和で民主的な社会を創っていくための活動を続け、次の世代に引き継げるようにしたいと思っております。
弁護士 斉藤 豊
業界で一度は誰もが使う弁護士専用の手帳に「訟廷日誌」というものがあります。司法試験に受かって、まだ弁護士になる前にこの「訟廷日誌」を手に入れ、内表紙に書いてあった弁護士法1条1項の規定=「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」と高らかに宣言されているのを見て、「格好いいよなあ、苦しい受験勉強を我慢してホントによかったなあ。」としみじみ思ったことを思い出します。2年後に入所した当事務所は、狭く、貧乏で、忙しくはあったけど、まさにこの弁護士法の規定を地で行くような事務所でした。
あれから30年。果たして弁護士法1条の使命にどれほど忠実な仕事ができたかは甚だ疑問です。
初心忘るべからずという念だけは年を追うごとに強くなってきます。意識しないと忘れてしまうのです。
弁護士 井澤光朗
それでは、現在暮らしている家族構成から、妻、長男、長男配偶者、孫、らん、しゅう、みれい、みーな、みりゅうの5人と5匹である。らん(メス)としゅう(オス)はミニュチュアダックスフンドで、現在ともに、8才である。みれい(オス)は13才、みーな(メス)は11才、みりゅう(オス)は10才の日本猫である。私のうちでも、日本社会と同じく高齢化が進んでいる。猫達は最近年を取ったせいか、ネズミの捕獲率が悪くなっている。しかし、現役である。
そして、私も50代も後半になった。体力も弱ってきていると思われるが、それはあまり実感しないまま、仕事をしては遊ぶという毎日を過ごしている。しかし、いまだ、現役、おいしいお酒をあびるほど飲んでみたいと思うのはまだ修行が足りないようである。
弁護士 村山 裕
この10年を振り返ると、事務所が担ってきた役割の中では、子どもの権利と教育の問題の分野での取組が多かったように思います。今も、安倍政権下での「教育再生」や「いじめ防止法案」の関係で、弁護士会などでも前面に押し出されています。教科書裁判の弁護団の末席に加えて貰った縁が、このような立ち位置を導いたのでしょう。この領域でのバトンを、次の世代に渡していけたらと思っています。個人的には、多少弱ってきた脚と折り合いをつけ、いつかフルマラソン完走を果たすのが目標です。先日数十年ぶりに訪れた陣馬山から高尾山のハイキングで見かけたトレイルランも面白そうでしたが、足元に注意しないと周りの人に迷惑をかけそうで、自重しているところです。
弁護士 菅沼友子
弁護士になってから最初の10年ほどは、男女賃金差別裁判や日本軍「慰安婦」補償裁判、セクシュアル・ハラスメント事件やDV事件などに関わってきました。その中で、個別の裁判でよい結果を出すことと共に、自分の足元から女性差別のない社会に変えていく必要性を痛感し、弁護士会の男女共同参画の推進に取り組むようになりました。それがきっかけとなって、この10年は弁護士会の仕事に比重が移っています。
今は日弁連にフルタイムで働いていますが、1年後にはまた一人の弁護士として、一つ一つの事件に真摯に取り組んでいく所存です。ただ、法律も司法制度も凄まじい勢いで変わっており、今は日弁連の立場でそれに関わっていますが、実務に戻った時にその変化に対応できるか、少し心配です。精進に努めたいと思います。
弁護士 加納 力
10年前の原稿では憲法の危機について触れました。その後、日本国憲法の改正手続に関する法律(通称・国民投票法)が成立し、現在は憲法改正手続のハードルを引き下げようとする動きが活発化しています。自主憲法制定を党是とする政権与党の改憲案は統制色に染まり、人が生まれながらに持つ権利、基本的人権の保障さえ否定する発言を公然とする国会議員が登場するに至っています。
私たち弁護士の仕事の中心は紛争を法的に解決することです。しかし、その向こう側に目指すものは、誰もがそれぞれの幸せを育んでいける社会づくりに貢献することです。「それぞれ」の幸せが肝腎なのです。個人の尊厳と幸福追求権を保障する日本国憲法13条を平然と踏みにじる勢力に抗することも、私たちの使命なのだという思いを強くしています。
弁護士 渕上 隆
2000年4月に弁護士登録するとともに、当事務所に入所して13年が経過し、今では「中堅」と呼ばれるようになりました。この間、いくつかの集団訴訟に携わり、困難な状況の中裁判を闘う原告の方、また、それを支援する多くの市民の方々と知り合い、たくさんのことを学ばせていただきました。また、私ごとですが、この13年の間に、結婚をし、子どもを持つようになり、「新人」の頃とは社会に対する見方も大きく変わりました。これからも変化を恐れず、しかし、初心を忘れずに、弁護士活動を続けていきたいと思います。
弁護士 船江莉佳
おかげさまで弁護士になると同時に東京中央事務所に入所して、ほぼ丸6年が経ちました。この間、事務所内外の方たちのお力添えのもと、ひとつひとつの事件に精一杯取り組むことができたことに感謝しています。
これからも、入所の挨拶状で述べたとおり“誠心誠意事件に取り組み、人の心の痛みが分かり、信頼される弁護士”であるべく引き続き努力を重ねるとともに、広い視野と柔軟な思考をもって真の問題解決に当たることができるように研鑽していきたいと考えています。
弁護士 松川邦之
当事務所にて弁護士活動を開始し、4年間が経過致しました。様々なご依頼や弁護士会活動に従事し、多忙ながらも充実した日々を送っております。
日々の中で学んだことは、弁護士業がクライアントの利益を最大限実現することを目的としながら、それは同時に社会の中の利害調整、正義と公平の原理の実現として行われるべきものであり、その実作業はクライアントが抱える困難に対し、専門的かつ確かな知識と経験を効果的に駆使しながらともにそれを乗り越え、あるいはそれに助力するものであるということでした。
私は9月末に当事務所から港区の事務所に移籍致しますが、今後も東京中央法律事務所の諸先輩方から学んだことを忘れず、日々クライアントの皆様や各事件及び社会と真摯に向き合って参りたいと思います。
弁護士 仲村渠 桃
事務所開設から今年で50年を迎えました。その間、様々なメンバーの入れ替わりを経ておりますが、このような長い歴史を持つ法律事務所は、日本全国においても珍しいのではないでしょうか。弁護士になって3年目の年に、このような貴重な節目に立ち会えたことは大変貴重な経験であり、嬉しく思います。それと共に、そのような歴史の重みを事務所の構成メンバーとしてこれからも受け継いでいくことに対する責任と重圧も感じています。
弁護士増員の時代を迎え、業界内の競争も激化の一途を辿っていますが、一人一人のお客様に、質の高いリーガルサービスを提供すべく、日々邁進すると共に、東京中央法律事務所の存在意義である、様々な人権課題にも誠実に取り組む所存です。