1 少年法2000年「改正」のもとで
開設40周年の頃は、2000年の厳罰化をはかる少年法「改正」がなされ、新自由主義「構造改革」のもとに格差社会がひろがっている状況を報告しました。
その後2003年に長崎や佐世保で14歳未満の中学生や小学生による触法少年事件が相次ぎ、触法少年も少年院送致を可能にする少年法「改正」や青少年育成施策大綱などによる低年齢の子どもも視野に置いた管理・統制の動きは続きました。
■ 付添人活動拡大の取り組み
重大事件を原則的に刑事罰のため刑事裁判所の手続きに付したり、事実を争うと少年審判に検察官が関与したりという2000年「改正」による重罰化に対処する意味で、弁護士の援助がないまま鑑別所に収容されて少年審判を受けていた少年に弁護士付添人をつけていく取り組みが、福岡県弁護士会を嚆矢として始まり、2004年10月に、東京の霞ヶ関の本庁管内でも当番付添人制度が立ち上がりました。これには、当時東京弁護士会(以下「東弁」)の子どもの人権委員会の委員長だった村山弁護士が関わりました。
その後、弁護士会による当番付添人制度が全国に波及していき、2000年頃には1%台だった家庭裁判所で審理される少年事件での付添人選任率が、2011年には16%となり、少年鑑別所に収容されて審判を受ける少年の72%に付添人がつくようになりました。しかし、おとなの刑事事件の被告人にはほぼ100%弁護人がついているのに比べれば不十分であり、国選付添人制度の拡大が課題になっています。
当番付添人制度を全国に広げるには、弁護士による少年事件への取り組みと付添人活動の質を確保する研修制度の強化が不可欠でした。事務所でも、少年事件に取り組む機会が多くなり、子どもの人権委員会に参加し弁護士会での付添人の研修制度を支えました。
■ 重罰化の流れの中で
2000年の重罰化「改正」で、少年に刑事処分(刑罰)が選択される場面が格段に多くなりました。その1つに、2005年に東京で起きた、子どもの尊厳を損なう不適切な養育を繰り返していた両親を殺害してしまった少年に、一審で14年の懲役刑を宣告した(控訴審で12年に減軽)、板橋事件があり、村山弁護士が弁護団に参加しました。少年の発達課題の捉え方、刑罰(刑務所)と保護処分(少年院)の少年の更生に働きかける効果の相違や、刑事手続から家庭裁判所の手続に戻す要件を巡る議論などが、その後実施されるようになった少年の裁判員裁判で活用されています。
また、母親が日本人と再婚し、養子になって日本の小学校に編入することになった中国人の少年が、養父と諍いとなり1回殴って倒れた弾みで頭を打ち死亡させた2009年の越谷事件の弁護団にも村山弁護士が参加しました。まさか死ぬほどの傷害を負わせたと思い至らなかった少年の未熟性より落ち度が重視され、少年院ではなく、刑務所での1年6月~3年の不定期刑(懲役刑)が選択されました。
これらの事件のように、確実に、少年の厳罰化が進行しています。この流れは、最近の不定期刑の上限を10年から15年に引き上げるなどの重罰化に向けた少年法「改正」法案の動きにも反映して、今なお続いています。
2 社会的養護(子どもシェルターなど)の取り組み
こうして少年事件や東京弁護士会の子どもの人権110番活動に取り組む中で、子ども達の居場所がなくなってきている現実を突きつけられるようになりました。少年事件で、受け入れ先が確保できずに少年院送致になったり、少年院から仮退院が出来ないでいる子ども、虐待や過干渉から逃れて家出をして今晩泊まるところがない子どもがいました。そうした子どものためのシェルター事業が、2004年、東弁との連携の下で、NPO法人カリヨン子どもセンターによって立ち上げられました。2008年に社会福祉法人に事業承継されましたが、創立時から村山弁護士が関わっています。
余談ですが、この事業は、東弁が毎年取り組んで、今年は20回を数える「子どもと弁護士で作るお芝居『もがれた翼』」公演で取り上げたことがきっかけになり、賛同する市民の支えがあって続いているものです。この「もがれた翼」公演には、かつては村山弁護士が、最近は松川弁護士が参加しています。
こうした子どもの社会的養護の取り組みは、子どもの貧困が、教育格差・貧困の連鎖を生むものとして社会問題となる中で、その重要性が認識されるようになり、2012年には国レベルでも子どもシェルター事業が位置づけられ、開設の動きが全国に広がって来ています。
カリヨン子どもセンターでは、働きながら自立の準備をする自立援助ホームだけでなく、心身を休め時間を掛けながら自立のための力を蓄えていくハーフウエイホームという新しい形態での事業の検討・準備も始まっており、これには事務所の松川弁護士が関わっています。
3 その他の取り組み
■ 学校事故
また、この10年の間には、学校事故の関係で、部活でのサッカーの試合中に落雷にあってしまったサッカー落雷事件や、柔道の昇段講習の模範演技中に急性硬膜下出血を発症してしまった柔道事故の事件などの弁護団に、村山弁護士が参加しました。学校関係者には、根拠のない常識に頼らず科学的な知見に依拠して子どもたちの安全を確保し、重大な結果を招かぬよう日頃の研鑽が求められることを確認する取り組みでした。
■ いじめ問題
さらに、2012年に大津の中学生のいじめ自殺事件で関心を呼んだ「いじめ」問題でも、松川弁護士が、事件以前から弁護士会が毎年企画している「いじめ予防」の出前授業を担当しています。
大津の第三者調査委員会報告書でも示されましたが、いじめ問題に関して弁護士・弁護士会の役割への期待も大きくなっており、これに答えるための弁護士会の体制づくりが課題になっています。さらに、「教育再生」と称して「いじめ防止対策推進法」が制定される中で、子どもの権利に即した「いじめ問題対策」の在り方の指針を示すことが求められています。こうした日弁連での取り組みに村山弁護士が参加しています。