[事務所創立50年企画/私と創立50年]
我が東京中央事務所は、創立50年を迎える。想うに私が入所して早くも39年が経過しようとしているのである。光陰矢の如しである。
私が入所したのは、1974年4月であった。この事務所に入所したのは、事務所が掲げる「憲法理念の実現」に魅せられたからである。この事務所「理念」は、抽象的で何でも好きなことがやれると思ったのであった。入所した頃は、事務所には家永教授の歴史教科書検定違憲訴訟が数本かかり、事務所全員が参加していたし、多くの平和、人権に係わる裁判に関与していた。また若手弁護士は、刑事冤罪事件(大森勧銀事件)にも力をいれていたのである。
そして私が入所した1974年は、所謂「74春闘」が全国でゼネスト規模で行われ、交通は麻痺し、我々の司法研修所の終了式もなくなったのである。時の総理大臣田中角栄は、このゼネストに関わった地方公務員労組役員を狙って刑事弾圧をかけ、この弾圧対策に新米の私も含め、これも我が事務所全員が対応することになっていった。その後20余年の間、多くの民事事件と共にこの刑事事件を担当することになるのである。鹿児島夫婦殺人冤罪事件にも関与し、幸い無罪判決を得た。
事務所は今後、この「理念」のもと如何なる展開・発展ができるのか、司法の危機の時代であるからこそ、この理念に価値があるように思えるのである。