弁護士 松川邦之

 
 児童虐待や家庭内外での性的暴行を受けた被害児の事案における調査・捜査の過程では、被害児が被害事実を繰り返し聞かれて虐待・被害事実を再体験して心の傷をえぐられてしまう、虐待や被害の事実を疑われて虐待で傷ついた子どもがさらに傷ついてしまう、といった二次的被害が生じることが多々あります。また、年齢や発達段階にもよりますが、子どもは誘導や暗示を受けやすいともされます。

 司法面接は、専門の訓練を受けた面接者が誘導や暗示をせず、また子どもの能力や発達段階に応じて”正確に”聴き取りを行い、この面接を子どもが安心できる環境で”一度だけ”行って、聴き取り回数を少なくします。また警察や児童相談所とも連携して面接を行い、その録画を共有することによって、繰り返し質問されることによる二次被害を最小限にすることを目的とします。

 この制度は、アメリカやイギリスで開発され諸外国で実施されているものですが、日本でも東京弁護士会と協力関係にある社会福祉法人カリヨン子どもセンターで現在試行的に実施され、実際の事件で運用されています。この面接がより実効的・一般的になるためには、刑事裁判との関係での法制化や多数の機関での面接実施体制・面接者養成の体制構築など、課題は山積みといった状態です。

 虐待や性暴行を受けた子どもたちは、力も立場も弱く、加害者から脅されて口止めをされていたり、大人一般・社会全体をまるで信用できなくなっていたりすることも少なくありません。客観的にとても酷い被害を受けていても「されたことについても自分が悪いんじゃないか」「本当は大したことじゃないのに、自分が大げさに考えているだけじゃないか」と考えてしまうこともあります。

 そういった子どもを、親や親族・弁護士・警察・児童相談所・福祉法人・施設職員・面接者・医療関係者・一般市民の方など、たくさんの大人で支援をする。「あなたの身体や気持ち、人生は大切なもの」ということを伝え、皆で連携して穴を作らない援助をする。一人の大人の力は本当に微力だけれども、そういった”多機関連携”による支援が困難を抱えた子どもたちには必要だと思います。

 全ての傷ついた子どもたち、大人たちが必要な援助を受けられることを願いつつ、私は私にできることを行って参りたいと思います。