弁護士 井澤光朗

 
 平成17年に会社法が全面改正され、その後の運用の中で、いろいろな問題点が発生してきた。その中で、会社法の改正の動きが法制審議会で議論されており、昨年末に中間試案が出され、議論がされている。平成17年以降も大型粉飾決算の発覚、大規模な第三者割当増資の激増などいろいろな問題が噴出している。予定では、この中間試案の議論を重ね、今年の通常国会に会社法改正の法案が提出されることになっている。字数の関係で、どのような点が改正の対象になっているか指摘するに留めるしかない。

 まず、公開・大会社である監査役会設置会社で、社外取締役の義務付けが討議されている。どの程度の大きさの会社に義務付けするかが議論されている。また、社外取締役の要件の見直しをするのか否か議論されている。経営者からの独立性確保という観点からの要件の見直しが議論されている。また、中間試案では、「監査・監督委員会設置会社」という新たな機関の設計が議論されている。上記機関の設置は、委員会等設置会社及び監査役会設置会社の中間的な機関の設計をもうけようとするものである。この監査・監督委員会には社外取締役を含めるか否かをめぐって議論されている。

 また、監査役会の機能を強化するため、会計監査人の選解任の提案権を監査役会に与えるか否か議論されている。そして、監査役の機能強化のため、その実効性を確保する手段として、内部統制システムについて、監査を支える体制の規定や、監査役の情報収集権を付与する規定や、内部統制システムとの連携強化の規定などが議論されている。

 さらに、支配株主の移動を伴う第三者割当てによる募集株式の発行をする場合には、現行法規では、有利発行をする場合以外は取締役会の決議でできることになっているが、それを株主総会の決議を必要とするか否かについて議論されている。その他にも仮装払込みの募集株式発行の場合の取締役、執行役の責任の問題も合わせて議論されている。

 重要な問題としては、現在、大きな会社では、持ち株会社が一般化している。そうだとすると、子会社における取締役の業務執行は親会社株主にとっては重大な関心事である。そこで、子会社の取締役の任務懈怠行為に対し、親会社株主が株主代表訴訟を提起することができるか否か議論されている。

 その他にも会社法改正は多岐にわたっている。会社における会社の機能をどのように構築していくかという基本的な制度設計に大いにかかわる問題である。これから法案も国会に提出されるが、今後の行方を注目していく必要がある。