一口に駐車場といっても、単なる空き地のようなところや、入場ゲートが設置されて管理人が常駐しているところ、鍵を預けて保管してもらうところなど、さまざまな形態があります。スーパーなどの商業施設や公共施設に設置されている駐車場は、一般に誰でも出入りできてしまうので、車上荒らしの被害に遭う危険性もそれだけ高くなります。施設側も、防犯カメラを設置したり、警備員を常駐させるなど、対策を進めているところが増えているようですが、万全というわけにはいきません。
利用者から見れば、その施設の駐車場で盗難に遭ったのですから、何らかの補償がされてもよいのではないかと思いたいところです。しかし、駐車場というのは、駐車する場所を提供するもの(賃貸借、使用貸借など)であって、自動車や車内の財産を預かるもの(寄託)とは違います。寄託契約では、受寄者に一定の管理責任が発生しますが、賃貸借契約や使用貸借契約ではそのような責任は生じません。これとは別に、駐車場法の路外駐車場に該当する場合、その管理者は自動車の保管について善管注意義務を負いますが(同法16条)、車内の留置物について直接義務を負うわけではありません。
レストランで食事中に車上荒らしに遭った事案で、自動車の鍵は利用客が持っていたこと、空いているスペースに自由に出入りできる駐車場であること、駐車場内での事故についてレストラン側は一切責任を負わないとする注意書きがあったことなどから、黙示的な寄託契約の成立が否定された裁判例があります(東京簡易裁判所平成17年7月19日判決)。他方で、ホテルに鍵を預けて管理を任せた後、自動車ごと盗難に遭った事例では、寄託契約の成立が認められ、ホテル側の責任が認められています(大阪高等裁判所平成12年9月28日判決)。
駐車場の管理状況にもよりますが、ご相談の案件ではスーパーへの請求は困難と思われます。何より、自動車は金庫ではありませんので、貴重品を置き去りにしないことが大切です。