私は今年で80歳となったが、誰にもまして私自身が「80歳の私」というものをかつて予想したことがなかった。この事実に私自身が驚いているし、「80歳の私」をどう生きていったらよいか、戸惑っているというのが正直なところである。
ただ、人間80歳ともなると、大抵のことはこれまでに経験済みであるから、どのようなことに遭遇しても、格別驚くようなことはない、と思っている。どういうことにはどう対処したらよいか、大体の勘どころは掴めている、と思っている。孔子様が、70歳になった人について、「己の欲するところに従って、則を越えず」とのたまわったのは、そんな心境を指してのことだったろうか。
だが、それと同時に、心身ともに衰えが進むことも事実であって、ことに80歳にもなると、物忘れにせよ、病気がちになるにせよ、変化は著しいものがある。そこでついついこの変化(老化)を歎きたくなるのだが、しかし、これはいわば自然の摂理、この変化(老化)がなかったら、この地球社会は過飽和状態に陥り、破綻する以外にはない道理である。
だからして、人が老いることは、人類社会の生成発展のために必要不可避のことなのだ、と悟ったところで、さあ、99歳の日野原重明ドクターに負けずに私も頑張らなくっちゃあ、と思い定めている今日この頃である。