昨年もお伝えした「子どもの貧困」問題の続報です。
財源問題など議論のあった「子ども手当」や、公立高校の授業料無償化が始まりましたが、貧困に陥っている子どもたちに届いたのでしょうか。困窮した生徒は以前から授業料免除となっていました。私立高校の授業料援助としての就学支援金も全額ではなく、自治体による加算も様々なようです。私立では、授業料以外の学校納付金の負担も大きく、受験生が公立に流れ、貴重な再チャレンジの場だった公立夜間定時制高校で大量の不合格者を出し、貧困を含めた困難な状況にある子どもがはじき出される事態が生じたそうです。高校統廃合による定員減が背景にありますが、この統廃合も、格差を広げ、子どもの貧困を深刻にした「構造改革」政策の一環でした。経済的理由による私立高校中退者の動向は昨年も相変わらずで、私立高の就学支援金の効果が感じられないという教職員組合の調査も報じられています。地域主権改革の流れが、貧困対策での自治体格差をもたらし、ナショナルミニマムスタンダードを切り崩すおそれも懸念されています。
このように昨年取り組まれた対応の動向も踏まえながら、子どもの貧困はなぜ問題なのか、どう対処すべきなのかを考える、日弁連人権大会とシンポが、昨年10月に岩手県の盛岡で開かれました。
シンポでは、東弁の「もがれた翼」劇団の特別公演「幸せになりたい」もあり観客の涙を誘いました。兄とともに母子家庭で育った17歳の少女が、ネットカフェを転々とする中でシェルターに保護されます。少女は、家計を支えていた母親が、リストラで失職し、うつ病を患い生活保護を受ける中で育ち、高校も何とか進学したものの、修学旅行費積立が出来ず中退し、社会に通用する力を身に付けることができませんでした。そのためシェルターから自立援助ホームを経て自立をめざした非正規雇用の職場でも、期待される力を発揮できず挫折を繰り返し、疲れ果てて、再びシェルターに繋がり、貧困の連鎖を断ち切る出発点に辿り着きます。お芝居はシェルターでの実例のアレンジで、子どもの貧困の実態を示すものでした。
一昨年、政府が公表した子どもの貧困率は7人に1人でした。ひとり親家庭では2人に1人が貧困線以下でした。非正規雇用が拡大する中、子どもの育ちの場である家庭が経済的に疲弊して孤立し、虐待の背景となったり、医療・食事という生命・健康面での格差や教育格差、成長発達の格差が、貧困の世代間連鎖を生んでいます。
人権大会での日弁連の提言は、子どもの貧困の実態調査に基づき期限を定めた数値目標を立て、子どもに届く具体的な対策を実行すること、良質な保育や教育を受ける権利の実質的保障、ひとり親家庭の生活全般の支援の充実、家庭での養育が困難な場合の社会的養護の体制を弁護士の法的支援も含めて充実するなどして、貧困の連鎖を断ち切ることを求めています。