昨年の「流行語大賞」にもなった「政権交代」。連日TV報道された「事業仕分け」や生活保護の母子加算の復活など、「政権交代」の象徴として実現されたことも幾つかあるが、真価が問われるのはこれからである。私が関わっている「女性の人権」関係でいうと、何と言っても「選択的夫婦別姓」がこの政権下で実現できるかどうか、千葉景子法相の積極発言もあり、注目されている。

 「選択的夫婦別姓」とは、結婚後も夫婦がそれぞれ従前の姓をそのまま名乗ることを希望する場合にはそれを選択できるようにする制度である。氏名は個人のアイデンティティの一部であり、それに関する権利は「人格権」として尊重されるべきである。現行の「夫婦同姓」原則の下では結婚に伴って改姓するのは圧倒的に女性だが、いくら愛する相手との結婚のためでも、既に周囲に認知されている姓を変えたくないと考える女性は少なくない。改姓に伴う職業上、社会生活上の不利益も大きい。国際的にも、「夫婦同姓」を強制している国は少数派である。このような中で「選択的夫婦別姓」の導入が20年以上前から求められてきた。政府もそのような声を無視できず、1996年には法制審議会が「選択的夫婦別姓」や「非嫡出子の相続分差別の廃止」を含む民法改正要綱案を答申した。ところが、当時の与党自民党内での合弁護士意が得られず、その後今日まで10年以上にわたって何の進展もない状態が続いてきたのである。

 この問題は、冷静な議論が尽くされるならば市民の(=その代表であるはずの国会議員の)大半の賛同が得られることだと思う。しかし、これまでは「家族崩壊につながる」などの自民党議員らの感情的な反発に阻まれて、それ以上の議論ができなかったのが実情である。新政権の与党内で、さらに国会において、実のある議論がなされるよう働きかけていきたい。