今年2月25日、東京都中央区保健所から、同区所在の「銀座眼科」で、昨年9月から今年1月までの間にレーシック手術を受けた患者67人が感染性の角膜炎などを発症、2人が入院しているとの発表がありました。厚生労働省によると、レーシック手術後にこれだけ多くの患者の感染症が発覚するのは異例ということです。
レーシック手術とは、屈折異常による近視を矯正する手術で、角膜の表層を切開してめくり、角膜のためにレーザー照射で角膜を削った後、めくった表層を元に戻すという方法で行われ、角膜を削って光線の屈折を調整するものです。
裸眼視力を回復させるので、眼鏡やコンタクトレンズなしに裸眼で生活したい人に人気がありますが、他方でリスクもあり、リスクの中には、手術の性質上回避することが困難なものと、医師が適切な注意をすることで回避できるものがあります。本件で問題となった感染症は、レーシック手術の際に角膜の内部に菌が入ったことなどにより発症し、レーシック手術の器具、手術場、医師及び患者についての衛生管理が充分になされていない場合などが原因となり得るものでした。この点、保健所の立ち入り検査や「銀座眼科」院長の聞き取りなどから、本件では手術時を行う過程における不適切な衛生管理が関与していると考えられています。
医療問題弁護団では、「銀座眼科」での感染症の集団発症が明らかになったことを契機に、3月9日から電話相談を開始する一方、医療問題弁護団団員の弁護士有志により、銀座眼科におけるレーシック手術による集団感染などについて、被害回復と再発防止を目的として、銀座眼科被害対策弁護団が結成されました(私も結成当初から加わっております。)。
弁護団の電話相談には、開始してわずか4日間の間に70名を超える方からご連絡があり、6月18日時点ではご相談数は合計167名にもなりました。その中には、中央区保健所の発表した期間よりも以前に銀座眼科で手術を受けて、感染症の被害をあった方も相当数いることがわかりました。
被害者の方々の中には、目の酷い痛みなどで他の病院に入院して手術を受けたものの、角膜混濁が残ってしまったり、今後失明の危険性があり角膜移植が必要かもしれないと医師に言われて失明の恐怖や将来への不安を抱えて日々過ごしているといった重篤な被害を受けられた方も少なくありません。また、健康被害ばかりでなく、治療を受けるに当たり、自由診療であるレーシック手術に起因した治療については健康保険の適用ができないとの理由で、医療機関から治療費の全額自己負担を要求され、経済的にも困難を強いられている方も多いのです。
このような被害の実情を踏まえ、現在、銀座眼科被害対策弁護団では、被害者の方々の相談に応じ、被害回復や再発防止のための諸活動を行っています。