私は昨年2月に離婚し、それから6カ月経った8月に今の夫と再婚しました。10月に子どもが生まれたので夫が出生届を出そうとしたら、市役所の窓口で、夫の子としては受け付けられない、前夫の子になる、と言われてしまい、結局いまだに出生届を出せていません。前の夫とは離婚する1年以上前から別居をしており、この子は今の夫の子に間違いないのですが、どうしたらいいのでしょうか。

 

 

 お子さんと同じような問題で戸籍のない子どもたちがいることが、昨年話題になりましたね。

 これは民法772条の「父子推定」の規定に関連した問題です。母子関係は出産という事実によって確定できる(代理母などの問題はありますが)のに対し、父子関係はそれほど明確ではありません。そこで、子どもの扶養に責任を持つ父親を早期に確定させるために「父子推定」の規定がおかれているのです。
 それによると、①結婚中に妊娠した子は夫の子と推定する、②結婚した日から200日経った後に生まれた子、または、離婚の日から300日以内に生まれた子は、結婚中に妊娠したものと推定する、とされています。あなたのお子さんの場合には、離婚してから300日以内に生まれている、ということで前の夫との結婚期間中に妊娠したもの、つまり、前の夫の子であると推定されてしまうことになります。

 このような場合、前夫が、この子は自分の子ではないとして嫡出否認の調停・審判等を家裁に申し立てることができます。また、あなたのように離婚の1年以上前から別居しており、およそ前夫の子ではありえない、というケースでは、あなた方の側から前夫に対して親子関係不存在確認の調停・審判等を申し立て、その確定後に今の夫である本当の父親が認知すれば、いわゆる「嫡出子」となることができます。

 しかし、既に離婚した前夫とこんなことで関わりを持たなければならないのは愉快ではありませんし、DVなどのために一切接触を断っている場合などはたとえ裁判所であっても絶対に顔を合わせたくない、という方もいるでしょう。そのような理由等で法的手続がとられず戸籍のない状態で過ごしてきた子どもたちが様々な困難に直面している、というので前述のように昨年大きな話題となり、その中で窓口の運用の変更がなされました(離婚後に妊娠したことの医師の証明がある場合には前夫の子とはしない)。しかし、救済範囲が狭く、立法解決が待たれている状態です。