弁護士 西岡弘之

 
 2006年10月10日、最高裁判所は、日本での在留を求め裁判を続けていたイラン国籍のアミネ・カリルさん一家の上告を棄却するとの決定をしました。

 アミネさん一家は、夫、妻、長女、次女の四人家族です。1990~1991年、夫、妻、当時2歳だった長女が来日し、超過滞在者となり、その後、次女が誕生しました。一家は、来日の約10年後に、入管に出頭し、「日本国内に強固な生活基盤が形成された」として、在留特別許可を求めました。しかし、法務大臣はこれを認めないとの裁決をしました。2000年8月、一家は、法務大臣の裁決等の取消を求め東京地裁に提訴しましたが、以来、アミネさん一家の代理人を務めています。

 地裁では、アミネさん一家の在留を認める画期的な判決が出ました。しかし、高裁では逆転敗訴となり、最高裁に上告しました。最高裁での結果は、手続面での違法を指摘し、在留特別許可を認めなかった裁決を違法とする裁判長の反対意見が添えられていたものの、結論としては上告を棄却するというものだったのです。

 2歳で来日した長女は、日本の文化しか知らず、イランの公用語であるペルシャ語もほとんどできませんから、日本とは全く文化の異なるイランで暮らすことはできません。

 裁判を始めた当時は小学校6年生だった彼女も、現在は高校3年生です。保育士になりたいというのが彼女の幼い頃からの夢でしたが、昨年11月に、短大の保育科に合格することができました。しかし、日本を離れることになれば、夢のために頑張ってきた勉強も続けることができなくなり、保育士の夢も絶たれることになるのです。

 上告棄却によりアミネさん一家を裁判で救済することはできなくなりましたが、2006年10月19日、法務大臣らに対し、在留特別許可を求めて、再審情願の申立をしました。機会があれば、結果について、また、ご報告したいと思います。