先の通常国会で愛国心に関する規定を盛り込んだ教育基本法の「改正」が議論されましたが、東京都においては、既に教育基本法の改正を先取りしたような動きがあり、そのような中で起こったのが都立板橋高校卒業式事件です。
都教委は2003(平成15)年10月23日、教育現場での「日の丸・君が代」の実施を事実上、強制する通達を発令し、翌年の卒業式でその実施を強引に推し進めようとしました。元都立板橋高校の教員であった藤田勝久さんは、2004年3月11日、卒業式に来賓として出席すべく出かけ、卒業式開式より20分近く前に、既に会場に着いていた保護者に対して、自己紹介をし、10・23通達後の教職員が置かれている状況を説明した後、「できたらご理解願って、ご着席お願いします。」という短い語りかけを行いました。その語りかけの終わりころ、管理職から退去指示を受け、藤田さんは、その退去指示に抗議した上、指示に従って体育館から出、開式の時間には学校からも出ておりました。
この時の板橋高校の卒業式は、全体としてみますと、スムースに進行して終了しており、国歌斉唱時、卒業生の約9割が着席しておりましたが、最後に卒業生が選んだ「旅立ちの日」を全員で合唱し、参加者が感動的な卒業式であったと言っているものでした。
藤田さんは、卒業式当日、体育館で行ったわずか3分の行為について、家宅捜索をされた上、その行為があってから6ケ月も経過してから、威力業務妨害罪として起訴されました。
さる5月30日、東京地方裁判所は、1年4ケ月間の審理の上、藤田さんに対し、藤田さんの上記行為が、威力業務妨害罪の「威力」に該当し、卒業式の遂行業務が現実に妨害されたとして罰金20万円の有罪判決を言い渡しました。
どうして、このような行為が刑事事件の対象となるのでしょうか。翌日の朝日新聞は社説でも、刑事罰を課すこと自体が持つ問題性を指摘しておりました。藤田さんの説明、語りかけは、平穏になされており、保護者に対する説明、語りかけは当然、憲法21条により保護されるべきものと考えられます。教育現場に与える萎縮効果を心配せざるをえません。
また、この地裁判決の事実認定には、多くの保護者が見ていた状況について誤りがあります。
控訴審で原判決を破棄し、無罪判決を勝ち取るべく頑張りたいと思っております。皆様のご支援のほどよろしくお願いいたします。