[特集 私と憲法]

 
 現行憲法が作成された、昭和21年11月3日頃は、未だ小学校に入学前であり、生まれ育ちが福島県の寒村だから、情報量も少なく、私としては勿論憲法の内容を理解していた訳でもなかった。ただ戦後の混乱期にあり、様々な変革が次々と日々起こり、兄達が今度は男女平等で結婚も自由である等とまず身近な事が話題となって聞かされていたし、選挙も普通選挙で母が選挙に行くようになる時など、何かと大変であった。
 憲法について、真剣に学び始めたのは、税務講習所で当時東北大学の憲法の教授であった清宮四郎先生から教わったのが本格的憲法との付合いの始まりである。
 この中で旧憲法のいかに時代錯誤的なものであったか、新しい憲法の理念や世界の歴史とフランス革命などからの流れの中で、平和憲法が制定されたこと、その各条文の理解と解釈の仕方や又身近な宗教の自由と公的財産の使用の禁止(憲法20条)など次々新鮮な知識を得、これらは驚きであった。この中で、当時アメリカが有色人種・黒人差別を公に続けていることの差別性などの問題性に改めて気づかされた。当時はアメリカが黒人差別することに非難は出ていなかったと思う。現在と隔世の感があるし、アメリカが嫌いになった理由の一つである。とにかく、新鮮な知識は疑問を呼び毎回先生に授業直後に質問(今思うと幼稚な質問)をしていたことが思い出される。
 この一年間は、民法、刑法、商法、税法など法律一般を大学の一流の教授等から始めて本格的に教わったことが、法律の面白さに興味を持つことになり、それが自分のその後の進路を決める決定的要素となったと言って過言でない。更にその後の職場(国家公務員)では、いかに憲法が生きていないか(憲法無視)を身をもって知らされたのである。それはそこで働いている公務員労働者ばかりでなく、国民に対しても憲法は無視されていた。弁護士になったのも、平和・人権・福祉などの憲法規定を実現するためであったし、今まではその実現に努力してきたが、昨今の状況は憂いに耐えない。