[特集 私とお正月]
私のお正月は至って平凡なもので、大体は毎年同じことを繰り返している。暮れの20日過ぎから大掃除に入り、ほとんど大晦日ぎりぎりまで、煤払いだ、ガラス拭きだと連日の“掃除三昧”。だから元旦は綿のようにくたくたになった身体をいたわって、昼頃までうつらうつらと大寝坊し、それでも昼過ぎには屠蘇の酒やお節料理で膨らんだお肚の“腹ごなし”に、近くの春日神社まで初詣で、というのがここ10年ほどのパターンである。
もっとも今から30年位前で、私が弁護士20年目の頃までは、毎年のように事務所の新人弁護士や若手グループを自宅に招いて酒を酌み交わし、マージャン卓を囲むなりしていたものだが、こちらが齢をとるに従って次第に億劫になり、近頃は訪ねてくる孫たちと、家族だけの正月を過ごすという体たらくになっている。
そんな中で、私が他の弁護士たちとは違ったお正月の過ごし方をしているとすれば、それは唯一つ、「正月の15日頃までは絶対に仕事を入れない」という方針を堅持していることだろう。場合によっては、それで困惑する人が出ているのかもしれないが、私としてはひたすらご勘弁願うほかはないと思っている。
なぜそうするかといえば、弁護士という商売は、ほとんど年中無休といってもよい位仕事に切れ目のない―西洋古典音楽のフーガのように―職業で、足を止めて何かをじっくり調べたり、考えを深めたりすることが甚だできにくい。そこで私は、夏休みの一ヶ月と正月休みの二週間ほどを“瞳のように”大切にして、少しでも“原始蓄積”をふやそうと腐心してきた。大方のご理解を頂ければこれ以上の幸せはないと念じている。