汚名をそそぐ
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今日は年度末です。
今月の大きなニュースといえば、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)での日本代表チームの3大会14年ぶり3回目の優勝がトップに挙がることは間違いないと思いますが、われわれの業界としては、袴田事件で再審開始決定が確定したことを挙げたいと思います。
死刑囚に対する再審開始決定が確定したのは、島田事件以来36年ぶり5件目になります。
弁護士に対して、「なんで犯罪者を弁護するんだ」という批判が向けられることがあります。
たしかに、被害者や犯罪によって乱される治安や社会秩序を考えると、「犯罪者を守る必要があるんだろうか」という疑問を抱くことは分かります。
犯罪被害者は救われなければいけませんし、犯罪が横行する社会が望ましいものでないことは言うまでもありません。
しかし、そのことと「『犯行を疑われている人』を弁護すること」とは両立しうるものです。無実でありながら身柄を拘束され罪を問われている人がいるのであれば、その人の味方になる弁護士が必要なことは疑いありません。
仮に、犯行に疑いの余地がない場合でも、「犯罪者が法に従って適切に処罰されることを監視すること」や、「適切な量刑について証拠を提出し、意見を言うこと」などは、適正な裁判が行われる上で重要なことです。
訴追をする検察官。
訴追される側の弁護人。
判断する裁判官。
それぞれがそれぞれの立場で事件や被告人に目を注ぎ、証拠や意見を提出し、その結論としての判決に至るという過程が大切なのです。
三人寄れば文殊の知恵と言われます。
立場が違うからこそ、智恵を司る仏様にも肩を並べられるのであって、事なかれ主義者とイエスマンとごますりの寄り合いでは烏合の衆にたとえられてもしかたありません。
袴田巌さんが死刑判決を受けるに至った経緯の中で、警察・検察を含む捜査機関による証拠のねつ造があったことが強く疑われています。
これが事実であれば、捜査機関の故意による違法な行為によって、一人の命が失われかねなかったことになります。
無実の人間が処刑される悲劇は、捜査機関の威信や見せかけの治安を維持することと釣り合うものではありません。
これが明らかになったのは、ご家族、支援者、弁護人の献身的な努力があったことは間違いありません。
WBCでヌートバー選手のペッパーミル・パフォーマンスが話題になりましたが、「身を粉にして働く」ことを意味するこのパフォーマンス、この方々にも捧げたいところです。
胡椒挽きと胡麻擂りの何と違うことか。
袴田さんの一日も早い名誉回復を祈ります。
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