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親子なのに親子と認めない

 

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ちょうど10日前の8月19日、東京高等裁判所は、ある家族の親子関係の存否をめぐる判決を言い渡しました。

事の経緯は次のようなものでした。
男性として生まれたAさんと、女性として生まれたBさんが互いにパートナーとなりましたが、Aさんは性同一性障害を抱えていました。そこで性別適合手術を受け、男性から女性への性別変更を行うことになりました。
AさんとBさんは2人の間の子どもを望んでいたので、性別適合手術前にAさんの精子を凍結保存し、Bさんはこれを使って2人の娘さんを授かりました。
性別適合手術を終えたAさんは、戸籍上も女性となりましたが、生物学的に言えば、Aさんと2人の娘さんとは父と子であることは疑いありません。Aさんは2人の娘さんについて、父親として認知届を提出するため役所に赴きました。母親は出産によって母子関係が認められますが、父子関係は、入籍していない男女間では、認知という手続をしなければ認められないからです。
ところが、戸籍係は、Aさんはすでに女性になっているので、父親として認知届はできないとして、受理しませんでした。

生物学的に親子であることは分かっているのに、法律的に親子と認められないのはおかしい。
そこで、東京家庭裁判所に認知を認めるよう訴えを起こしたのですが、裁判所はこの請求をしりぞけ、Aさんと娘さん2人についての親子関係を認めませんでした。いわく、「現行の法制度では親子関係を認める根拠が見当たらない」という理由でした。

これを受けての東京高裁判決です。

東京高等裁判所は、家庭裁判所の結論を一部変更し、長女については父親としての認知を認め、二女については認めないとする判決を言い渡したのです。

どうして姉妹の間で違いが出たのでしょうか。
実は、長女が生まれたのは、戸籍上Aさんが女性に変更される数か月前のことで、二女はその後に生まれていたのです。
認知届自体はAさんが女性になった後ですが、東京高裁は、長女はAさんが戸籍上男性だった当時に生まれたので、認知を求める権利がある、二女はAさんが女性になった後に生まれたので、女性を父親とすることはできない、そう結論づけたのです。

二女についてDNA鑑定の結果からも親子であることは間違いないけれど、法律上親子と認めるわけにはいかないと言いつつ、長女については認めている理屈は、出生時に父親が男性だったというだけの話なわけですから、本当は裁判所も何とか親子関係を認めてあげたいという思いがにじんでいるように思います。
ただ、もう一歩踏み込むのはためらわれた。
最高裁で判断を示してもらった方がいいのはもちろん、本当は立法的に決着してほしい。性別適合手術を前提にした性別変更を制度として認めた以上、いずれ生じる問題だったのですから。
そんなふうに東京高裁もいろいろと思い悩んだのではないかと推察しています。

そもそも、同性婚が認められるようになれば、いろいろと乗り越えられると思うのですがね。

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