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政府の「物価偽装」を裁判所が断罪

 

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大阪地方裁判所

 2月22日、大阪地裁は、2013年から2015年までの間に段階的になされた生活保護基準の引下げは違法であるとして、生活保護減額を取り消す判決を言い渡しました。
 同種の裁判は、当事務所の渕上、長谷川両弁護士が担当する東京地裁での裁判を含め全国30か所で起こされており、判決の言い渡しは2件目でしたが、原告の主張を認めて減額を取り消す司法判断は今回が初めてでした。
 生活保護基準の本体部分に関する裁判での原告の勝訴は、当事務所の新井章弁護士が担当した1960年の朝日訴訟第1審判決以来ですので、その意味で画期的な判決といえます。

 2012年、女性週刊誌が関西のお笑い芸人の母親が生活保護を受給していることを、あたかも「不正受給」であるかのように報じたこときっかけとして生活保護バッシングが巻き起こりました。
 当時野党であった自民党はこうした生活保護へのバッシングを煽りつつ、「生活保護費10%カット」を公約に掲げて、総選挙に臨み、その年の12月に政権復帰を果たしました。
 そして、第2次安倍内閣は公約通り2013年から生活保護基準を引下げたのです。

 ただし、生活保護を受ける権利は憲法25条が保障する生存権に由来する基本的人権ですので、いくら選挙公約だからといって、根拠なく生活保護基準を引下げることは許されません。
 そこで、持ち出された口実が「物価水準の下落」です。
 物価が下がっているのに生活保護を引き下げないと、実質的には生活保護を引上げたことになってしまうというわけです。

 しかし、その物価の下落なるものは、総務省が作成公表している消費者物価指数ではなく、厚労省が独自に算定した数値を用いて計算したもので、自民党の選挙公約との辻褄を合わせるための「物価偽装」であるとの批判がありました。
 大阪地裁もその点を指摘して、政府が主張する物価水準の下落なるものは
 「統計数値との合理的な関連性や専門的知見との整合性を欠く
として、生活保護基準引下げは違法であると断罪したのです。

 憲法25条1項が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の水準を具体的に表すのは生活保護基準です。
 生活保護基準は就学援助、住民税の非課税限度額、保育料の免除や軽減、国民年金保険料の免除、医療保険の月々の自己負担限度額の軽減、介護の利用者負担や介護保険料の軽減、都道府県別の最低賃金などとも連動していて、生活保護基準の引下げは生活保護利用者以外の国民、市民の生活にも大きな影響を及ぼします。

 昨年来の新型コロナ禍により、生活保護に頼らざるを得ない状況の人々は増えていますが、生活保護基準の切下げによって生活保護利用者を追い詰めてきた政府の態度は、生存権を保障した憲法の精神に反するものといわざるを得ません。
 この度の大阪地裁判決は、そのような政府の姿勢を改める好機となりうるものです。
 政府に対しは、判決を受け入れ控訴して争うことなく、充実した社会保障制度の構築を求めます。

 - 裁判

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