わきまえない
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公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長の、日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会での不適切発言が問題になっています。
「女性が大勢いる理事会は時間がかかる」という趣旨の発言があったそうですが、その発言は「あいさつ」であったにもかかわらず、全体で40分にも及んだというのですから、誰が会議を長くしているのか、ブラックジョークとしか思えません。
そんな中で気になったのは、
私どもの組織委員会にも、女性は何人いますか、7人くらいおられますが、みんなわきまえておられます。みんな競技団体からのご出身で国際的に大きな場所を踏んでおられる方々ばかりです。ですからお話もきちんとした的を得た、そういうのが集約されて非常にわれわれ役立っています
という発言です。
わきまえているから、会議で発言せず、粛々とした進行に協力してもらえている、という文脈なのでしょうか。
あたかも、会議で発言することは、円滑な進行を妨げ、主催者の足を引っ張る、おとなげない、好ましくない態度とでも言わんとするかのようです。
おそらくこの発言は、女性だけに向けられたものではなく、自分より若い人、社会的地位の低い人、自分に同調しない人、そのくせ自分より才能のありそうな人等々、ひっくるめて言えば、自分から見て「生意気」な人に向けられたもので、とりあえず女性をあげつらったものなのでしょう。
ところで、「わきまえる」というのは、漢字で書くと、「弁える」と書きます。
弁護士の「弁」と同じ文字を使いますが、実は少し違います。
旧字体で書くと、弁えるの「弁」は「辨」ですが、弁護士の「弁」は「辯」なのです。
真ん中に刀を表す「刂」が入るのが、弁えるの「弁」。
一太刀で一刀両断にする様は、物事の違いを見分ける、物事の道理をよく知っているという意味を表すのにふさわしい文字ですね。
ちなみに、特許などを扱う弁理士の「弁」は「辨」の文字を用います。
かたや「辯」の方は、巧みにものを言うというような意味合いです。
いかにも「弁護士」の「辯」という印象ですが、取り方によっては、ちょっとイヤな感じもただよいます。
辨えている人は好ましいけれど、辯の立つヤツは気に入らない。
森会長基準だったら、弁護士はわきまえていない連中の筆頭格かもしれません。
しかし、その評価は甘んじて受けましょう。
忖度の意味でわきまえてばかりいたら仕事になりませんから。
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