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読点とカンマ問題

 

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裁判文書には20世紀と21世紀で大きな違いがあります。

20世紀、つまり2000(平成12)年12月までは、裁判関係の文書といえばB5版の縦書きで、それもB4版の紙に印刷したものを2つに折って袋とじにしていました。

これが21世紀を迎えた2001(平成13)年1月1日からは、一斉に「A4版横書き化」が実施されました。世紀をまたいだ事件についても、この日以降に提出される裁判文書はA4版の横書きに変更されたのです。

この裁判文書のサイズ変更は、事件記録を収納するキャビネットの棚を変えなければいけないという(深刻な!)問題も招いたのですが、文章が横書きになることによって、非常に小さいけれど、頻発する問題が生じました。

それが、読点とカンマ問題です。

実は、裁判文書を含む公用文にはルールがあります。
1952(昭和27)年に国語審議会が決定した「公用文作成の要領」というものがあって、ここには、

句読点は,横書きでは「,」および「。」を用いる。

と書かれているのです。
つまり、横書きの場合、公用文では読点(、)ではなく、カンマ(,)を使うのだと。

これを同年4月4日付けで、内閣官房長官が「公用文改善の趣旨徹底について」として、各省庁次官あてに周知徹底を求めています。

この「公用文作成の要領」は、後に常用漢字表や現代仮名遣いなど一部が改められているそうですが、少なくとも句読点の用法は変わっていません。

そのため、裁判所でも、A4版横書き化以降の判決には、読点と句点(、。)ではなく、カンマと句点(,。)を使っているのです。

ためしに、裁判所ウェブサイトに掲載されている最高裁判例で、20世紀の最後の判決文と21世紀最初の判決文を比較してみると、前者は読点、後者はカンマという使い分けがされているのが分かります(もっとも、前者は実際には縦書きですが)。

何しろ裁判所ですから、決まっているルールを破るのは御法度なのかも知れませんが、その徹底ぶりは、裁判所のウェブサイトにも読点ではなくカンマが用いられていることからもうかがわれます。

しかし、筆者個人としては、このカンマというやつが、どうしても日本語の表記と馴染まないように思えてなりません。何だか数の桁区切りみたいで、落ち着かないのです。まあ、慣れの問題なのでしょうけれど。
ですから、この記事でも読点を使っていますし、裁判所に提出する書面でも、原則として読点を使うようにしています。
それで問題になったこともありません。

そもそも日本語は縦書きであるべし、とまでは言いませんが、「句読点」というくらいですから、読点をカンマに置き換えるのは無理があるように思えるのです。

そんなことを考えているときに、公益社団法人印刷技術協会のサイトに「用字用語と表記基準について考えてみた」という記事を見つけました。
この記事によると、「公用文改善の趣旨徹底」を謳っていた内閣官房も、読点派になっているとのこと。内閣官房のサイトを見ると、たしかに読点と句点(、。)を使っていました。

これは大変心強い。

いかに裁判所が後生大事にカンマ主義を貫こうとも、私は読点と句点で横書き文書を作成しようと思います。

もちろん、弁護団事件などでカンマ派が優勢の場合はそれに従いますが。

 

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