野党はだらしない?
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世間は参議院議員通常選挙の真っ最中です。
国政選挙としては2017年10月の衆議院議員総選挙以来です。
この間、国会では様々な論戦が行われ、中には内閣総辞職に至ってもおかしくないような問題も多く取り上げられてきました。
その個々の中身について、ここでは言及しません。
今回取り上げるのは、「野党がだらしない」という声についてです。
内閣総辞職に至ってもおかしくないような問題が起こっても、実際にはそうならないのは、「野党がだらしないからだ」という論調です。
しかし、何となくこの言い方に違和感を覚えます。
当事務所の憲法ブログ「いつも心に憲法を」の最初の記事に、こんな一節があります。
自由な権力行使のためには、人権保障や平和主義、権力の分散などは足手まといであり、「決められない政治」の元凶であるようにも見えてきます。憲法を改正して、権力者が自由に権力行使をできるようにすることは、権力者自身にとってありがたいことでしょう。また、その権力行使するさまを劇場かスタジアムで見学するように傍観する観戦者にとっても、「プレイヤー」にはめられた足かせは、熱狂を削ぐ材料にしか見えないかも知れません。
「日本国憲法をまもるということ」より
これは、近代憲法の役割が、権力を抑制することによって個人の尊厳を守ることにあるという文脈で書かれたものです。
国会内外での政府与党と野党との論戦を、ちょうど野球かサッカーの試合でも見るように眺めると、「内閣総辞職に至ってもおかしくないような問題」というのは、野党側の決定的チャンスということになるのでしょう。それを結局総辞職に追い込めなかったのは、ピッチャーの投げたど真ん中ストレートを空振りしたとか、相手ディフェンスの裏に回り込んでキーパーと1対1になったのにシュートがゴールの枠にも行かなかったとか、そんな感じなのかも知れません。
これではスタンドから「何やってんだ。だらしないぞ。」という野次も飛ぼうというもの。
しかし、かたや憲法で定められた臨時国会の開催要求も無視、予算措置が必要な問題が起こっても予算委員会は開かない、沖縄のみに負担を強いる新基地建設を、県民投票を無視して押し進める、過労死対策を脇に置いて長時間労働容認の「働き方改革」を導入する、首相の友人が経営する学校法人に異例の優遇が行われ、役所内では様々な行政文書が廃棄・改ざんされる等々、足かせとなる憲法なんてとっくに相手にせずに軽やかに飛び回るのに対して、有効な決定打を決められないのは「だらしない」からなのでしょうか。
どうも、ここで言われる「野党はだらしない」発言は、第三者の立場から他人事(ひとごと)として敗者に投げつけるだけの言葉であるようです。
「負けたのは野党で、俺たちには関係ない。」
自分は観客席にいて、グラウンドに立つプレイヤーではないからこそ、「だらしないぞ」と言えるのではないでしょうか。
いや、もしかすると、観客席どころか、スタジアムにもいない、テレビで観戦するわけでもないけれど、たまたま聞こえてきた勝負の結果に、「何だ、だらしねえな」とつぶやくだけなのかも知れません。
先ほどの憲法ブログの記事は一節は次のように続きます。
ところが、こうした「足かせ」こそが、日本国憲法を含む近現代憲法の真骨頂であり、多くの犠牲を払って人類が獲得した叡智というべき憲法の姿です。権力の刃は仮想敵だけでなく味方にも観戦者にも向けられてきました。権力は暴走する。それが人類の歴史であり、近代憲法誕生のエネルギーとなる「反省」でした。
「野党はだらしない」と論評する人にも、そのだらしなさの結果が降りかかってきます。もっと外側から見れば、参政権を持つ人が投票にも行かないことこそ「だらしない」と言われかねません。
2019年7月21日、参院選の投票日です。
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