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防衛省と住民基本台帳

 

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自衛官募集のために地方自治体が協力してくれないけれど、自衛隊を憲法に明記すれば、協力を得られる「空気」が醸成されるから、憲法を改正すべきだ、という珍説が飛び出したようです。
発言の主が、内閣総理大臣の肩書を持つ方と知って、もう一度驚きました。
そんなことなら、自衛隊法とか自衛隊法施行令の改正を検討すればいいのに、どうしちゃったのでしょうか。

防衛省が、自衛官募集のために市町村に住民基本台帳の写しの提供を求めていることは、すでに知られていることでした。
就職を考える年齢の若者に自衛官募集のダイレクトメールが送られることがあるのですが、そのために住民基本台帳の写しがあると便利ということのようです。

ちなみに、国または地方公共団体の機関は、住民基本台帳法11条に基づいて、市町村に住民基本台帳の閲覧を求めることができることになっていて、その閲覧状況は公表されることになっています。だいたい市町村のウェブサイト上に公表されていると思います。

ためしに東京都昭島市のウェブサイトを調べてみると、2017(平成29)年度には国などの申請で14件の閲覧があり、そのうち4件は「自衛官及び自衛官候補生の募集に伴う広報」のために自衛隊東京地方協力本部が閲覧したもので、対象は市内全域の中学3年生、高校3年生、大学4年生に相当する年齢の男女でした。

ダイレクトメールを送らなければいけないほど自衛官募集に難航しているのは、少子化と集団的自衛権行使容認の閣議決定と平和安全法制(戦争法とも言われます)の整備よる危険な任務の増大が背景にあるように思われますが、今回はその話とは別の観点のことに触れたいと思います。

上の例で、なぜ東京都昭島市なのか?と思われた方も多いでしょう。
昭島市は東京都の西部にあって、東は立川市、南は多摩川を挟んで八王子市という場所にある人口約11万人ほどの自治体ですが、北側には在日米軍及び航空自衛隊の横田基地が隣接しています(正確には福生市の一部を挟んでいますが)。
そのため、昭島市には、横田基地の軍用機による騒音被害を受けている住民が多く住んでいて、横田基地公害訴訟の原告団にも多くの昭島市民が参加しています。

横田基地公害訴訟のような基地騒音訴訟では、どの期間、どの場所に住んでいたかというのが必ず問題になり、原告弁護団は毎回原告全員の住民票を取り寄せ、居住期間の調査をすることになります。
もちろん、昭島市に住んでいる原告についても、住民票の取り寄せをします。昭島市だけでも数百人の原告がいますから、大変な作業です。

しかし、昭島市の住民基本台帳で言えば、「補助金申請者の住所確認のため」に同市の環境部環境課が閲覧した例もあるように、例えば北関東防衛局横田防衛事務所が「補償対象者の住所確認のため」に閲覧することはできるはずですが、しないんですよね。
あくまで、裁判を起こしてきたのは原告住民なのだから、自分たちで居住期間の立証をせよというわけです。

他方で、国は横田基地など防衛施設周辺の騒音被害地域を、防音工事対象区域として定めているのですが、その区域を示した地図(縦覧図)は、横田基地で言うと北関東防衛局横田防衛事務所まで行かないと見られません。しかも、写しはもらえませんし、地図を写真に撮ろうとすると断られます(経験済み)。

自衛官募集のために憲法まで変える必要があると言い出すくらいなら、騒音被害区域図なんてインターネット上に堂々と公開し、被害地域の住民全員を対象に、過去の裁判基準で補償をするくらいのことをやってもらいたいところです。
それこそ、「お住まいの地域は補償対象ですから、申請をお忘れなく。」というダイレクトメールを送ってみたらいいのです。その時は、何も住民基本台帳の閲覧なんて面倒くさいことを防衛省がやる必要はなく、区域指定のデータを自治体に提供して、各自治体から住民宛てに発送してもらってもいいでしょう。
きっと自治体もよろこんで協力してくれると思います。

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