(1) 自宅で仕事をする場合も、労基法、就業規則で決められた就業時間の定めは有効です。労働時間の把握は使用者の義務であり、この義務はリモートワークといわれる働き方の場合も例外ではありません。所定労働時間を超えた労働をした場合は時間外手当を請求することができます。情報通信が発達した現代においては、携帯電話やインターネットで労働者の事業場外における労働時間を把握することはそれほど困難ではないからです。使用者からは労基法のみなし労働時間(労基法38条の2)の適用があるので、残業代は支払わないといわれる場合もあるかもしれません。この制度は、事業場外の労働をする場合に使用者がその労働時間を算定し難いときは所定労働時間を働いたものとみなすという制度です。しかし、厚労省のガイドラインでは、情報通信機器を用いたリモートワークを自宅でする場合は、① 当該情報通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態におかれていて、② 当該業務が随時使用者の具合的な指示に基づいて行われている場合はみなし労働時間制の適用はないとされているので、この制度の適用がある場合は少ないと考えられます。 (2) リモートワークに用いるパソコンや周辺機器、ソフトウエア等の費用は使用者が負担するのが原則です。この費用を労働者の負担とする場合は、労基法89条5号が「労働者に・・・作業用品その他の負担をさせる定めをする場合」は就業規則に定めを置くものとしていますので、就業規則であらかじめその旨定めておく必要があります。インターネット通信は、今や日常生活上不可欠なものとなっているので、自宅の通信回線を業務にも用いた場合に、接続費用等の負担をどうするかが問題となります。接続契約の内容にもよるので(従量契約か定額契約か等)一概に言えませんが、WEB会議の頻度や通信の内容(動画配信の有無)等通信量も勘案して、通信費用の一部を「在宅勤務手当」等の名目で会社に請求することも考えられるでしょう。