-学校の「立ち番」業務命令は違法であるとして損害賠償を命じた地裁判決-
何回か事務所だよりでご紹介してきた、鶴川高校の教職員の権利擁護の活動に関し、画期的な判決が出ましたので、ご紹介します。
鶴川高校は、東京都町田市にある女子高校ですが、教職員の賃金水準は東京都でも最低の水準であり、教職員の権利を否定される中で、1991年に教職員組合を作り、ねばり強く交渉を求めてきました。
しかし学園当局は、誠実に交渉を行わないだけでなく、組合員をクラス担任やクラブ顧問につけず、一時金の支給で差別するなどの組合攻撃を行ってきました。
そこで組合は、1998年に不当労働行為救済の申立てをし、東京都労働委員会と中央労働委員会で救済命令が出されました。
学園はこうした命令に従うのでなく、一時金の支給をやめ、さらに長期にわたり行ってきた定期昇給を停止し、組合を兵糧攻めにしてきました。
組合は2004年に第一次訴訟を、2007年に第二次訴訟を、2010年に第三次訴訟を提起し、第一次訴訟で1700万円の支払いを、第二次訴訟で約3000万円の支払いが命ぜられました。
このように労働委員会や裁判所が学園の運営の是正を求めているのに、学園は逆に「生徒の指導」「安全の確保」などの名のもとに、組合員の教職員に対し集中して、長時間通学路に立たせるという、めちゃくちゃな業務命令を押しつけてきました。
組合は、2009年にこの違法な命令を「立ち番」と名付けて、学園と理事長を相手に、損害賠償請求の裁判を提起しました。今回この裁判の判決が2012年10月3日に東京地裁立川支部でありました。
判決は、次のとおり学園の「立ち番」の業務命令を違法とし、学園と理事長に対し、1227万円の賠償金の支払いを命じました。
判決はまず、「本件立ち番は、その必要性や合理性に乏しく、原告ら教員に、肉体的負担と精神的苦痛を課してまで業務命令として実施すべき理由に乏しい」と判断しています。
そして、このような「立ち番」が、これまで学園が「長きにわたり原告らを抑圧してきた」上で行われたものであり、「原告らの教師としての誇り、名誉、情熱を大きく傷つけるとともに、組合員である原告らを不利益に取扱い、かつ、原告らの団結権及び組合活動を侵害するものであって、労働契約に基づく指揮命令権の著しい逸脱・濫用に当たる違法なものというべきである」として、「立ち番」の業務命令が違法であることを明瞭に認定しました。
さらに、「原告らに対する従前の抑圧も、被告学園ないし鶴川高校を支配する被告百瀬(理事長)の意思に基づきされてきた」のであると認定し、学園だけでなく、理事長個人の賠償責任を認めました。
今回の判決は、学園と理事長の非教育的でかつ反組合的な態度に対し、鋭い指摘をしている点でも、理事長個人の責任を認めた点でも、優れた判決といえます。しかし残念ながら学園と理事長は控訴をし、舞台は東京高裁に移っています。
組合では、高裁での争いとともに、今回の判決に基づいて、学校運営を根本的に改めることを学園に要求し運動を強めています。