弁護士 長谷川 弥生

 国士舘大学は東京、世田谷を本拠とする私立大学です。同大学では現学長下で懲戒処分が濫発され、そのうち3件を江森・斉藤・長谷川が担当してきました。

 昨年10月15日、同大学文学部I教授とT教授の地位確認訴訟で勝訴したのでご紹介します。

 文学部東洋史学専攻で長年教鞭をとってきたI教授は、数年前の学長選挙で現学長に競り負けたのですが、選挙戦での遺恨が残ってか、学生の面前で学長批判をしたという咎で懲戒解雇とされました。I教授の選挙参謀だったT教授は、学生の卒論指導を咎められるなどで「講師」に格下げ。
 3年余の裁判闘争を経て、このたびI教授T教授共に処分前の地位に戻すとの東京地裁判決が出ました。元の地位に戻せばそれでよいだろうというこの種の訴訟では異例なことに、学校法人と学長個人の不法行為責任をも認め、それなりの額の損害賠償義務を認めたという非常に嬉しい判決でした。裏を返せばそれだけ不当な懲戒処分だったということです。

 私にとっても弁護士になってすぐから携わってきた事件であり、判決の日に両教授らと酌み交わした紹興酒の味は格別でした。

 さて、I教授は学校に戻っても来年3月には定年。定年までのラスト3年間を失ったことになります。またこの間、専門分野で共著をなしたT教授は、本の奥付に「講師」の肩書で載ってしまいました。こうした被害が判決だけで十分慰謝されるとまではいえないでしょう。
 しかし、トップの顔色を窺い「物言えば唇寒し秋の風」という空気の学内にあって、この勝訴判決が持つ意味は小さくありません。なによりも、大学を愛し、学生を愛する両教授の思いが学校法人に響くことを願うばかりです。