弁護士 服部 咲
「新潮45」(2018年8月号)に、自民党所属の国会議員である杉田水脈氏が「『LGBT』支援の度が過ぎる」という論稿を発表しました。本論稿は、「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子どもをつくらない、つまり『生産性』がないのです」等と述べています。また、杉田氏が過去に出演した番組においても、LGBTの子どもはストレートの子どもに比べての自殺率が6倍高いと笑いながら話すシーンもあり、LGBTに対する無理解・偏見に基づく差別的な発言を行いました。
本論稿に異議を唱えるため、2018年7月27日、自民党本部前で抗議運動も行われ(約5000人が参加したとの報道あり)、野党が反対の意見を表明し、与党の政治家さえも杉田氏に対して批判を加えました。LGBT法連合会や私が所属しているLGBT支援法律家ネットワーク有志からも抗議声明を発表しました。このような社会の動きも相俟って、杉田氏は2018年10月25日に「不用意に『生産性』という表現を用いたことにより誤解や論争を招いてしまった」と釈明しましたが、表現行為の撤回は行いませんでした。
そもそも、子どもの存在・出産・子育てを生産性という経済的利益性から捉え、税金を支払うか否かを決めるというその価値観こそがまさに、自己決定権や個人の基本的人権を保障している憲法の理念に著しく反しています。またLGBTに限らず、子を産まない・持たない家庭は存在し、『生産性』という言葉は、あらゆる人に大きな衝撃を与えました。杉田氏の発言は紛れもない差別発言であり、早急に表現行為の撤回を行うべきです。