弁護士 田原俊雄

 すでに今年も半ばを過ぎたが、わが家の玄関先には、鉢植の薄黄色の花菖蒲が二輪すくっと立って咲き誇っている。もっとも既に同じ鉢で四輪が見事に咲き誇って散った残り花ではあるが。気候の変動は今年も激しいが、その中で自然のたくましさと美しさには感嘆するばかりである。特に今年は、長年、家人を喜ばしてくれていた甘夏蜜柑の見事な豊作に出会ったからなお一層である。高い枝に実った、例年になく大きく黄色く熟れた甘夏の皮をむいて、一房ずつ口の中に入れるたび、そのうまさを堪能することができた。この老木には、私が昔、虎ノ門の街頭で見付けた鉢植えをその後自ら庭に根付け、毎年肥料や枝切り等丹精を込めて育てた思いも、こめられているに違いない。
 それに引き換え、人間の世界は、中近東を始めヨーロッパ、トランプ大統領のアメリカと混沌の極みである。とりわけ日本の国政の長期の混乱は、強引な国会運営を含めて、戦後確立した民主・平和主義憲法国家の全面的否定に等しい。戦後日本は、深刻な反省の上で、国民主権の原理を確立し国民の権利確保を目的として、国会議員を選出したものである。国会は、その目的を実現する場であるにも拘わらず、森友、加計学園問題は勿論、共謀罪法案に至っては、その必要性や具体的内容すら明らかにせず、国連担当官等から異例の警告すら受けている。国民世論も、戦前の治安維持法の復活を危惧するなかでの安倍政権一連の独裁的政権運営の強行・実施は、断じて許されず、持続的に斗うべきである。