昨年は全国の軍用空港の騒音訴訟で慌ただしい動きがありました。
3月には沖縄・普天間基地訴訟が審理終結(結審)を迎え、11月17日に那覇地裁沖縄支部で国に賠償を命じる判決が言い渡されました。嘉手納基地訴訟も8月に結審となり、判決が待たれています。10月には厚木基地訴訟で最高裁での弁論が行われました。日々騒音に脅かされる住民の生活を守るために、自衛隊機の夜間飛行制限(差止め)を命じた横浜地裁判決と東京高裁判決が維持されるのか否か。12月8日の判決は本稿の締め切り後ですが、深刻な騒音被害についての賠償以外の救済のあり方について、最高裁の判断には目が離せません。(追記あり)
私が関与している横田基地訴訟は、この1年間で審理がペースアップし、2度にわたる被害地域での検証や17名の原告本人尋問を経て、3月1日には東京地裁立川支部で結審を迎え、今年中には判決が言い渡されると見込まれます。
各地の訴訟を担当している弁護団は、これまでにも様々な形で相互に協力関係を築いてきましたが、情報や知見の共有を一層進めるため、昨年3月、全国基地爆音訴訟弁護団連絡会を結成しました。各地の訴訟はすでに三度四度とくり返され、そのたびに軍用機の騒音が違法なレベルに達していることが判決で認定されていますが、国や米軍は、一向に抜本的な被害軽減や被害補償制度の創設に取り組もうとしません。原告団に加えて、弁護団も全国組織を結成したのは、こうした司法軽視の態度を黙認するわけにはいかないという思いがあります。
(追記)
本稿締切り後の昨年12月8日、厚木基地訴訟の最高裁判決が言い渡されました。内容は報道等でご存じのとおり、自衛隊機の夜間飛行差し止め請求と、将来にわたる損害賠償請求をいずれも棄却しました。
横浜地裁と東京高裁が認めた自衛隊機の飛行差し止めや将来にわたる損害賠償請求は、いずれも2016(平成28)年末までに限定して認めたものでした。これは、厚木基地に配属されている艦載機が2017(平成29)年には山口県の岩国基地に移駐される計画であることから、少なくともそれまでの被害を最小限のものにしつつ、相応の賠償を行うべきとする判断によるものでした。
ところが、最高裁は、3週間ほどしか残されていない期間の自衛隊機の差し止めさえ、公共性や公益性の名の下にその請求を排斥し、ほとんどが過去のものとなっている被害に対する賠償さえ認めなかったのです。多数決によってさえ奪うことのできない権利=人権の砦が最高裁であるはずなのに、公共性や公益性と人権を天秤にかける発想は、最高裁の職責にもとると言わざるを得ません。