グローバル化は経済だけではなく、私たちの身近なところまで進んでいる。日本でも国際結婚によるカップルが年に約2万5000組誕生し(総数の3.5%)、国外に在留する日本人は100万人を超える。そのような中で、父母の関係が険悪になり、家族で暮らしていた外国から日本へ、あるいは逆に日本から外国へ、一方の親が国境を越えて子を連れ去ってしまい、残された親と子との関係が断たれてしまう、という問題が生じている。本年4月に日本で発効したハーグ条約及びその実施法は、このような問題に対応しようというものである。
新設された「子の返還手続」は、子を従前住んでいた国に迅速に返還させるためのもので、親権や監護権に関する決定は行わない(親権等については、従前住んでいた国において決定される)。返還によって子が心身に害悪を受ける重大な危険がある場合など、法定の返還拒否事由がある場合を除き、裁判所は子の返還を命じることになる。申立後の更なる連れ去りを防止するため、裁判所は出国禁止命令や旅券提出命令を発することもできる。また、子の所在が分からない場合には、国の機関(日本では外務省)が所在確認を行う制度も設けられた。
なお、ハーグ条約が適用されるのは、16歳未満の子であり、従前住んでいた国及び現在いる国がともにハーグ条約加盟国である場合である。また、子の返還手続きは本年4月1日以降に連れ去られた子が対象となる。
日本では、離婚を決意した親が子どもを連れて家を出るのはよくあることだが、今後ハーグ条約事件が本格的に動き出す中で、国内のケースについても議論が起こりそうである。
子どもをめぐる問題とハーグ条約発効
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