昨年10月23日、東京都教育委員会は、教育長名で、入学式、卒業式等の学校行事において、教職員に対して実際上、日の丸・君が代を強制する通達を発しました。
これに対して、本年1月30日に東京都の228名の教職員の方々(さらに5月27日には117名の方々)が原告となって、この通達自体が、憲法、教育基本法に反するので、国歌を斉唱する義務等は存しないとする訴訟を起こしました。この訴訟は行政訴訟上、無名抗告訴訟の範疇に入りますが、処分がなされる前の時点で起こしたことに意味があり、予防訴訟としての機能を果たすものと考えております。
実際、本年3月に行われた都立高校の卒業式、4月に行われた入学式における日の丸・君が代の強制はすさまじいものがあり、都教委は、己の良心を護るため不起立等の対応をした約250名もの教職員を懲戒戒告処分に付しました。東京都で、これだけ大量の教職員が処分に付せられるということは、ここ30年来なかったことであり、ここにも、最近の東京都の教育に対する対応の異常さが現れているように思われます。この処分に付せられた教職員の多くの方々は、その処分の不当性を訴え、人事委員会に審査請求の申立をすることにしました。
国や地方公共団体が、教職員や生徒に対して国旗などに敬礼させようとする問題は、諸外国でも起きておりますが、アメリカの連邦最高裁は、1943年という時期に、国旗敬礼拒否バーネット事件について、国旗敬礼と宣誓とを強いる地方当局の行為は、憲法違反となるとし、「自由な公教育は、非宗教性と政治的中立の理念に忠実たろうとするなら、いかなる階級・宗派・政党・党派にも敵味方してはならない」し、「青少年を良き国民に教育しようとするなら、まさにそのゆえに個人の憲法上の自由の保障に気をくばらなければならない」と格調高い判決を言い渡しております。
わが国においても、既に、日の丸・君が代強制に反対する訴訟はいくつか起こされております。ただ、今回東京都が行っている厳しい対応は、今までになかったことであり、それがそのまま認められるようであれば、全国的にも波及する危険性があると思われます。その意味でこの国歌斉唱義務不存在確認等請求訴訟は、思想・良心の自由を護る闘いとして、重要な意味を持っていると思われます。皆様のご支援をお願い致します。