[特集 私とお正月]

 
 私は元々「寝正月」派でした。というのも、実家がそば屋だったため、大晦日は年越しそばの注文で大忙しで、猫の手ならぬ子供たちまで駆り出される始末。店じまいの後すべての片付けが終わるのは年を越してからといった具合でした。そうなると正月はどこにも出掛けず、家で休むのが当然だったのです。最近はスーパーでもコンビニでも元日から営業しているところが多く、少々気忙しい感じもしますが、せめて三が日はのんびりしたいものです。

 ところが弁護士稼業に就いてみると、時として年末も年始もなく仕事が入るときがあります。それが当番弁護士というもの。逮捕・勾留された人からの要請で、初回無料で警察などに面会に行くこの制度は、年末年始も当番名簿が作られているので、運が悪いと正月気分に浸っている間もなく、ネクタイを締めて出動しなければなりません。

 どうやら私は運の悪い方らしく、三が日の当番を1度ならず経験し、ある時などは初詣客でごった返す浅草まで面会に行く羽目になりました。正月早々警察署に行くなんて、スリにでも遭ったか駐車違反ぐらいのものでしょう。たまたま乗ったタクシーの運転手にはずいぶん変な目で見られたものです。

 しかし、現に身柄拘束されている人にとっては、むしろ年末年始の寒さが身にしみるところ。何かの間違いで逮捕されている可能性も皆無ではありません。こんなときこそ当番弁護士の出番だと心に言い聞かせ、寒空の下、警察署に向かうのです。

 とはいえ、やっぱり正月はゆっくりしたいもの。
 願わくは、正月くらい日本中の事件が、いや、世界中の事件・紛争が止まんことを!
 そして昨年様々な災害に見舞われた被災者の皆様に平穏が訪れんことを!