[特集 私とお正月]

 
 お正月は配偶者の実家のある京都で迎える。にしんの山椒煮かきつねののった年越しそばをいただいた後、あちらこちらで除夜の鐘が響く中を北野天満宮に初詣。常日頃の不信心にもかかわらず、この時ばかりは途中の氏神様にも天満宮に隣接した平野神社にも寄って、今年1年の平穏と家族の健康などを祈る。

 元旦の朝は白味噌・丸餅のお雑煮やおせち料理をいただき、梅干しと昆布で入れた大福茶を飲む。午後には、菩提寺である黒谷さんにお参りへ。黒谷(金戒光明寺)は幕末には京都守護職・会津藩主の松平容保の宿舎とされたところで、昨年のNHK大河ドラマの冒頭ではその石段を隊士が駈け登っていくシーンが使われていた。その後は親戚の家にお年賀にうかがう。年に一度、嫁らしく振る舞わなければならない場面で、けっこう気をつかう。

 2日はたいてい、どこか近くの寺院を訪ねる。初詣で賑わう神社に比べ、正月のお寺は静かである。新年で掃き清められているせいか、冷え冷えとした大気のせいか、清澄な雰囲気がただよっている。訪れる者まで凛とした気持ちになり、内心ひそかに今年の抱負を考えたりする。

 このまま引き締まった気持ちで仕事始めを迎えればよいのだが、後半は私の実家へ。私のいなかは浜名湖の奥、みかんの産地として知られている。東海道線から1両編成のジーゼルに乗り換えて約20分。静かな湖面、青い空に白い雲、みかん山に明るい陽差し…箱庭のようなのどかな景色が目に入る。心も体もあたたまってほぐれてくる。実家でも姪や甥や猫たちをかまって、のんびり過ごす。2日もいれば完全な平和ボケである。

 数日後、東京に向かう新幹線の中で、今年の抱負は何だっけ、などと思い出しながら、今年もまた仕事に追われる日々が始まるのである。